ロリ悪魔との契約は危なくない

小野冬斗

第1部~ゲーム▶スタート~

プロローグ

 これはきっと夢だろう。

 そうじゃなければ漆黒の闇の中に漂っていることも、体が全く動かないことも、そして何より、目の前に白髪の幼女がいることも説明がつかない。

「聞いとるのか?堀井奏太ほりいかなたよ」

 白髪の幼女はお婆ちゃんのような口調だったが実に可愛らしい声で言った。

 ―奏太でいいよ。

 そう言おうとしたのだが声を出すことができない。息はできるのに。

「ふむ、では奏太よ」

 あれ?伝わった?心が読めんのかな。

 ―君の名は?

 心の中で聞いてみる。

「聞いとらんかったのか?我の名はワーペル・ルノ。そうじゃな、ワーペル様とでも呼ぶとよい」

 偉そうだな。まぁ、ルノでいいや。

「軽々しくその名で呼ぶでない!我を誰じゃと思ってる」

 ルノは顔を真っ赤にして怒った。そんなに嫌なのかな?でも、誰かと問われると、

 ―ルノという名のロリっ子

「違うわい!我はロリっ子じゃない。いいかよく聞くんじゃぞ」

 ―そこまで言うなら聞いてやろう

「我はな、悪魔じゃ」

 すんなり言われても困る。

 悪魔?数々の伝承に現れる悪い奴のことか?

 そんなのが夢に出るとは、よっぽど疲れてるのか。それとも、近々、死ぬのか!?

「お主の考えを一個一個取り上げると話が進むきがせん。我からの話は一つじゃ」

 ここで一旦間を置く。

「よいか?お主は悪魔である我に選ばれたのじゃ。契約してもらうぞ」

 選ばれた?契約?このロリ悪魔と?

 悪魔との契約。それは、代償として命を貰われるやつなのでは?

 けど、これは夢だ。なら一瞬のことだ。契約してもいいだろう。

「まぁ、拒否権はないんじゃがな」

 そう言ってルノは右手をクルッと1回転させた。すると、バングルとスマホのような形をした端末がルノの右手中空に現れた。

「このバングルはお主の左腕に。端末はずっと持っていてもらう」

 そう言うと、ルノの右手にあったバングルは左手首に、端末は体に吸い込まれた。

 夢にしてはなんとなく現実味がある。感覚としてそう感じた。

「さて、契約の内容じゃが」

 ダメだ。これを聞いてはいけない。本能がそう告げた。

 だが、聞きたくなくても体が動かないためどうすることもできない。

「いいか?よく聞くのじゃ。我はお主に力をやる」

 力?思わず反応してしまう。

「そうじゃ。そして、お主は我の与えた力で世界を征服する」

 そう言ってルノは楽しそうに笑った。

 笑い事ではない。これは、夢じゃない。

「何じゃ、やっと気づきおったか」

 じゃあ、世界を征服する?

 嫌だ。俺はただの高校生だ。普通に生きられればそれでいい。

「もう遅いぞ。バングルが手についておるじゃろ。それは契約の証じゃ」

 何でだ?悪魔ならば人間の世界を征服するなど簡単なことではないのか?

「たわけ!」

 た、たわけ?

「契約するとなぁ、元よりも力が上がって征服が楽になるのじゃ。それに、他の奴らも同じように契約して征服しようとしてるのじゃ」

 同じように他にも?

 普通の日常が壊れる。

「まぁ、詳しい事は後で説明する」

 そろそろ体を動かしたい。ずっと動けないのがきつい。

 早く、この悪夢から目覚めたい。

「もう少し辛抱せぇ。バングルと端末の説明が終わったら開放してやるわ」

 聞かなきゃ、ダメか。

「バングルは契約中に外れることはない」

 外れないのか。

「それと、画面がついとるじゃろ?」

 視線だけ向けて確認する。

 確かに、手首の内側に画面がある。

「そこには、お主の身体データが見れるようになっておる。主に身長、体重、脈拍、血圧などじゃ」

 便利、なのだろうか。

「そして端末じゃが、それは今まで使っていたスマホの替わりにするといい。他の人の情報も見れるしの」

 スマホの替わり?まだ使えるのに?

「さて、そろそろ時間じゃな」

 そう言ってルノは徐々に近づいてきた。

 時間?まだまだ聞きたいことはたくさんある。

「こっちも話すことは山ほどある。じゃが、全部元の世界で話すとしようか」

 ルノは俺の顔の前に手をかざした。

「それじゃあ元の世界で会おう。」

 意識が遠のいていった。

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