ある日地球にダンジョンが発生した

SHOW

第1話『最初の被害者達』

魔法なんてものは存在しない現代にある日突然ダンジョンが出来た。


神は夢にて全ての人類に願いを叶えるチャンスとしてダンジョンを提供した。


国は未知のダンジョンに調査隊を派遣したが、未だに帰って来た者はいない。


ダンジョンと言うからには中には罠やモンスターのような何かがいるという噂がネット上に流れていた。


人生を諦めた者や一攫千金を狙う者は後を絶たない。


国もダンジョンが国内にあるのは穏やかでは無いらしく、もしも邪な願いを叶えられたら――


そんな思いから現在。


私はとある理由から、一番最初の調査隊に志願して、只今モンスターと戦闘をしている。


「タウロスが来るぞ!


銃を構えろ!」


出口はなぜか入ると同時に消えてしまった。


進むしかないということだろう。


また、これが戻ってきた者が居ないということに関連しているというのは予想がつく。


私が志願した理由とは、私の友達がダンジョンの発生の際にその場所に居たらしく、発生と同時に取り込まれたようで、その助けに向かうためである。


今もたまにモンスターの名前と画像が添付されたメールがその友人から届くからきっとまだ生きてはいると思うけれど……。


ピロン……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第1章『日常と非日常の境』


不思議な夢を見た。


「君達人間の願いを叶えるためにチャンスをあげよう。


君達人間は大なり小なり願いを持っていて、その中の大なりの方はそれこそ僕ら頼みになっている。


開運の神社に小銭を投げて祈っても効果を感じられないのは単純にそれでは願いに釣り合わないからだ。


そこで、最初のチャンスに話が戻るわけだ。」


ーー願い。


そんなものが自分にも有る時期は有ったかもしれない。


だが、そういった願いは今まで自分の力でなんとかしてきた。


だからだろうか?


その変な声に対して興味以上の感情は抱けなかった。


「君達にチャンスを与える。


過酷で、命がけで、そしてチャレンジしたことを後悔するようなそんなチャンスだ。


それだけの事をしてようやく釣り合うと思わないかな?」


その声には聞き覚えは無いが、夢に出てくるということは、どこかで聞いたことの有る声なのだろう。


彼はこれが夢であると理解した上で目を覚ました。


朝の6時30分。


登校するには早すぎる時間に目を覚ました。


伸びをして眠気を覚まし、背中がバキバキと音を鳴らす。


あくびをしつつパジャマを脱ぐと、壁に掛けてある制服を手に取る。


時期としては丁度夏の8月。


夏休みの最中である。


そんな夏休みに制服を取るのは自分が部活をしなくてはならないからだ。


自分は部活の特待生で入学しており、部活をサボるという行為をするわけにはいかない。


制服に手早く着替えると、寝癖を直しに洗面所へと向かう。


自室が2階に有り、洗面所は1階のため、ポリポリと頬を掻きながら下に降りると洗面所の戸を開いた。


洗面所にはピンクと青と黒と白の歯ブラシが置いてあり、彼は黒の歯ブラシを手に取る。


それにチューブの歯磨き粉を塗って口に突っ込み、右手で前後に動かしながら、頭を水で濡らす。


適当なところで水を止めて頭をタオルで拭いた彼の髪が雫を跳ねさせた。


ある程度湿り気は有るが、そこで放置してうがいに移る。


口の中がミントの爽やかな香りでスッキリし、眠気もバッチリ覚めた。


その後は台所へと向かう。


4枚の食パンをトースターにかける。


その間に4つの卵と8枚のベーコンをフライパンで炒める。


焼き上がった食パンとベーコンエッグを皿に乗せ、ラップをかけてリビングのテーブルのそれぞれの席の前に並べて置いておく。


そこまで終わると自分の食事をして、食器を洗い、時間は7時30分。


そろそろ出発しないといけない時刻となったことを確認した。


部活だけなので、部活で使う竹刀を背負った。


玄関に向かい、学校指定の靴を履き、玄関に置いてある名札を胸ポケットに着けた。


上に最上高校と所属している学校名が書いてあり、真ん中に赤いラインの仕切り、その後に黛晶まゆずみあきらの名前が掘られている。


「行ってきます。」


まだ寝ているであろう家族に気を使って小さく呟くと、晶は玄関の扉を静かに閉めた。


アブラゼミのジリジリという鳴き声と焼けたアスファルトが開幕やる気を一段階下げる。


それでも、それは自分が決めたことだからと自転車に股がり、学校へと向かった。


緩やかな坂道が長く続いており、暑さも相まって学校の剣道部の部室に到着した8時頃には体力の殆どが残っていなかった。


部活開始は8時30分。


それまでは胴着や防具にゆっくりと着替えながら休む。


「おー、ショウ今日も早いな!」


部活の先輩であり、副部長の真田が声をかけてきた。


ショウというのは、晶をショウと間違って読まれたことから定着してしまった自分のニックネームである。


「先輩、何度も言いますがそれは名前じゃなくて……。」


このショウというニックネームは実は中学校の頃にも呼ばれていて、その時とは呼ばれる起因が異なる。


昔は低身長故の小さいから取ってショウと呼ばれていたので、凄く不服なのである。


「お、先生が来たな。


そろそろアップ始めないと先生キレるぞ?」


ショウとしては、別に先生がキレるのが恐いからではないが、真田に名前を訂正するのを後回しにして、アップに向かう。


彼ら剣道部で行うアップとは、準備体操や素振り、ランニング等である。


ショウはランニングするまでもなく充分に体が暖まっていたので、素振りをしていた。


そこに部長の黒光が現れて大きな声で挨拶をすると、こちらを睨んできた。


「おら!声出せ声!おら!ショウ!声が小せえ!」


やれやれ、何度訂正してもコレだから困る。


「部長!それあだ名!」


「うるせえ!特待生のくせして、インハイ初戦敗退なんてしやがって、ぶっ殺すぞ!」


これもショウとしては、けして部長が恐かったからではない。


だが、確かに初戦敗退したのは事実なので素直に頷いておく。


「うす!」


もう半年みんなからはショウとしか呼ばれておらず、名前を忘れられている感しかしないと内心思っていると……。


「ショウ!また声が聞こえねえぞ!」


ショウはまた注意を受けてしまったので、やけくそのように大きく返事をする。


「はい!」


自分に出せる最大の声で返事をして、声出しをしながら素振りをする。


だが、武道場は剣道部だけでなく、その他の部活と隣接しており、隣になぎなた部と柔道部、校庭側に弓道部が有る。


その隣接した部活動の人が俺を見てクスクス笑っていた。


ショウは恥ずかしさを感じながら、その視線から逃げるように素振りを辞めて摺り足を始めた。


そんな日常風景からーー


フッと世界が変わった。


ごつごつした岩肌の地面と壁。


裸足だったショウは摺り足の最中だったのでザリッと足の裏にダメージを受ける。


痛みでしゃがんでいるショウが景色の変化に気がついた頃に他の皆も気がつき始めた。


「な……なんだ?」


動揺している部長の黒光がキョロキョロと視線を巡らせる。


ショウも状況の変化に頭が追い付かず、明らかに薄暗い洞窟のような環境に目が泳いでいた。


どうしてこうなったのだろうか?


と、異様さもさながら、それ以上に原因も気になる。


木の床が岩肌になり、薄暗く、明かりも無いのに見渡せる。


奥に階段のようなものが見えるが、どうしたものか?


こういうときはひとまず落ち着いて誰かに連絡するのが良いだろう。


そう思考を巡らせて、黒光に提案する。


「黒光部長……ひとまず外部と連絡を取ってみたらどうでしょう?」


黒光は頷くと携帯を防具袋から取り出して連絡をしだした。


ショウも自分もやろうと思ったようで、電話帳の中から順番に電話していくが全然繋がらない。


家族はまだ眠っているようだ。


友達も部活か何かで繋がらなかった。


そして、最後にショウは中学時代の友達である針無折紙という名前に電話をした。


中学の時の同じ部活動で確か中卒で自衛隊になったという針無。


仕事中で無ければ……。


「もしもし?」


繋がった!!


「キャァァァァア――!!」


近くで悲鳴があがる。


ショウはビクリと震え、驚いた拍子に携帯を落としてしまった。


携帯を後回しにして、悲鳴方向へと目を向ける。


ぶよぶよした謎の液体の中にもがいている女子弓道部員がいた。


そのぶよぶよは液体なのに重力に抗うかのように球体を保ち、けれども地面はしっかりと濡れているように見える。


とにもかくにも助けに行こうと近づいた黒光の頭上にーー


ポツポツと雫が垂れていた。


ショウ達は上を見上げる。


石の天井に貼り付いた無数の液体。


その雫がショウの頬に当たったとき、頬が焼けるような痛みが走った。


そして、誰が叫んだか分からないが、その一言が切っ掛けでパニックが起こる。


「逃げろ!!」


降り注ぐ巨大な液体。


皆が覆い被さられ、飲み込まれていく。


ショウも例に漏れずもその液体に飲み込まれた。


そして、肌を焼くような痛みが全身を駆け巡る。


ショウは痛みによる条件反射で、もがくしか出来ないでいた。


視界の先では先程の弓道部員がみるみる溶けていく。


酸ーー


それも強力な。


痛みと恐怖から、より一層大きく暴れたショウは何かに手が触れた。


液体の中で唯一の個体とも言える丸い何か。


ショウは生きるために無我夢中でそれを握りしめた。


弾けるように体から離れていく液体。


ショウの体は酸により真っ赤に腫れていたが、大怪我は免れたようだ。


「どうしたの?


ショウ――」


ショウは携帯を落としているのを思い出してそれを拾った。


これを外部へと伝えるためだ。


視界の様々な所で仲間が次々に溶けていくのを視界におさめながら、なるべく落ち着いて言葉を吐き出す。


「スライムが……。


ゲームやアニメで見たようなスライムがいる。」


天井から降り注ぐように1人ずつ飲み込んでいくスライム。


まるで人間を狩るかのように降り注ぎ、壁へと追い込んでいく。


そして、取り込まれた人間は抵抗もままならず、溶かされていった。


その状況を見て思わず胃から消化物が逆流してきた。


口を広げて地面へと撒き散らす。


皆がパニックになり、必死に逃げ、助けを呼ぶ。


「外はどうなってる!?」


ショウたちだけこんな状況に陥ってるとは限らない。


だが、学校に居た筈なのに状況がここまで変わっているということは、学校の様子にも何らかの変化が有る筈だと思ったのだ。


見回した限りでは出口は見当たらず、上へと続く階段が見えるばかり……。


「私は今、自衛隊の遠征で沖縄にいる。


だから、そっちの様子を聞かれても困る。」


仕事の関係で遠く離れていると知り、項垂れたショウ。


だが、スライムの弱点を唯一知り得た自分が動かない訳にはいかないと、床に落ちている竹刀を片手に握りしめる。


通話をそのままに針無へと警告する。


「針無、最上高校には近付くな。


いいか?何が有っても絶対に来たらダメだ。


ーーうわっ!!」


通話に夢中になっていたショウの隣にスライムが落ちる。


慌てて後ろに後ずさりをし、竹刀を唯一の弱点へと向けて突き出す。


弾けて溶けるように地面に吸い込まれる液体。


「よし、間違いない。


みんなを……助けるぞ。」


◇ ◇ ◇


最寄りのスライムへと駆けていき、竹刀をスライムの弱点に突く。


高校からは突き技が有るのだが、これが練習の成果なのか、寸部違わずそれを捉えた。


同じようにもがいている仲間達の必死な目を向けられ、手が緊張で強ばるのを感じた。


こんな命のかかった緊張を高校生という身でしなくてはならないなど、今まで思ってもみなかった。


平和の中で安穏と暮らした結果ではあるが、それでも今この時戦う力が有ることが自分の緊張の中で勇気をくれた。


突き出された竹刀。


それが、スライムを突き抜けて壁に当たり、真ん中で折れた。


武器を失ったショウは視線を巡らせるが、近くにその手の物は無く、その代わり自分が戦っているのを見て真似をしている者達が居た。


自分の役割は終わりかと緊張の糸が緩んだところで、同じクラスの女子である梅木織姫がスライムに飲み込まれているのを見付けた。


手元に武器はない。


けどーー


ショウは覚悟を決めて梅木のスライムに駆け寄ると、弱点へ向けて腕を突き出して飛び込んだ。


硬いものを手に感じた時、それを思いきり握りしめる。


弾けるスライムの中から少し衣服の溶け、真っ赤に肌を腫らした梅木が呼吸を乱して自分を見上げていた。


「ショウ君……。」


同じクラスであってもコレなのだ。


「立てるか?」


手を差し伸べてそれに梅木が手を重ねる。


「うん。」


◇ ◇ ◇


ほとんどのスライムが破裂し、安全圏を確保できたショウ達は階段に集まっていた。


それぞれが必死の形相で息を整えたり、むせび泣いたりしている。


ショウはそんな中で同じ部活の者達と防具や竹刀等を共有していた。


そして、それぞれの部活が並ばされ、前に『なぎなた部』『剣道部』『柔道部』『弓道部』の顧問が並ぶ。


「ひとまず出口を探して階段の先を先生達が調べてくる。


外に連絡はつくようだが、外に出られなければ意味はないからな。


おい、格部活の部長は?」


そう言って、柔道部の顧問が視線を巡らせる。


「剣道部はさっきのやつに殺られたようだ。」


「弓道部もそのようです。」


「なぎなた部もですね。」


暗い空気が充満する中で、上級生達が前に出た。


「先生達だけでは危険です!


俺達も行きます。」


そう言う上級生達。


だが、残ることへの不安というのが有ったのだろう。


それが手伝ってか、下級生までもが上に行くと言い出した。


結果としては、残るものは動けない程の重症の生徒と下級生となった。


先に上に上がって様子を見てくるという上級生達。


ショウは一年生なので、残ることになった。


階段を上っていく先生と上級生達。


下級生と重症の生徒は不気味な空間に緊迫した空気を張りながら階段の先を見つめていた。


先生と上級生を含めて、剣道部がショウを含めて13人、柔道部が8人、弓道部が6人、なぎなた部が5人。


その中で上級生が抜けたことで残された一年生は6名。


重症の生徒が2名とも一年生で剣道部のジョンと細野だった。


そんな中で鼻歌を歌い出す者が居た。


確か柔道部の牧瀬なるみであるとショウは気が付く。


彼女は顔やスタイルがとても良く、人当たりも良い。


何が楽しいのか、顔には常に笑顔が貼り付いていて、その笑顔に心を奪われる男子は少なくないだろう。


また、部活に励む姿勢にも非常に交換が持てるのだが、残念なことに努力が実を結ばない運動音痴で有名だ。


それに対して梅木が不快を露にする。


「こんな時に何が楽しいのよ!?」


様々な理不尽に対する怒りが牧瀬へと向けられる。


梅木はギャルっぽい見た目の女の子だ。


いつもツンとしており、近寄り難い雰囲気の美人である。


「楽しくなんかないよ。


けど、辛いときこそ楽しいことを考えてないとすっごく辛いと思うんだ。」


そう言って牧瀬は梅木の両頬を左右の指で上に押し上げる。


「はい、笑顔ー。」


牧瀬の言い分も分かるが梅木はそれに対して牧瀬の手を払った。


「触らないで!」


所在なさげに牧瀬の手が梅木の手前で固まった。


「ちょっと姫、喧嘩したらだめだよ。」


もう一人の一年生である竹下かなが梅木の肩を掴むと後ろに下がらせた。


「ごめんね牧瀬さん。」


申し訳なさそうに頭を下げる竹下。


「ううん、良いよ。」


なんでもないよと手を振り、牧瀬はそれ以上は鼻歌を歌わなかった。


ただひたすらに沈黙が続き、そしてーー


階段の先から悲鳴が聞こえた。


たったの6人しか残されていないショウ達でさえも大きなどよめきを生むほどに、その悲鳴は残された者達に不安を煽った。


そんなとき、ジョンが立ち上がる。


ジョンはこんな名前だが、戸籍は日本で両親の片方が日本人だった筈だ。


その体は筋骨粒々で、見事なまでに黒光りしていたのだが、先程のスライムのせいで左腕を失っていた。


出血こそは大したことはないが、ずっとこのままというわけにもいかないだろう。


もう一人の重症者の細野はムチムチっとした体が特徴的で、ちょっと体が太ましいのが悩みの……デブだ。


そのデブだった細野の体の手足が溶かされきっており、四肢を失って転がっていた。


生きているのが不思議なほどの大怪我。


口からは荒く呼吸を繰り返しており、いつ事切れてもおかしくはないだろう。


ジョンは海外生活が長かったせいで日本語が話せない。


だが、簡単な意思疏通に言葉はいらない。


ショウの肩を叩き、階段を指差すジョン。


それだけでジョンの意思はショウへと伝わった。


ジョンは「俺とこの先を見てこよう。」と、そんなことを伝えようとしているのだ。


ショウは頷き、ジョンに竹刀を渡す。


ジョンとショウは共に竹刀を1本ずつ手に階段へと歩いていく。


すると、梅木がその後ろに付いてきていた。


その手には弓が握られており、背中には何本かの矢が背負われている。


「見に行くんでしょ?


私、これでもショウ君とジョン君と同じで特待生なんだから!」


そう言う梅木だったが、残っているメンバーで特待生でないのは牧瀬だけだろう。


最上高校は普通入学、学校推薦、スカウトの3つの入学方法が有るのだが、そのスカウトされた者だけを集めた特待生クラスにショウ達は所属していた。


つまり、同じクラスではない牧瀬は自ずと……まあ、そういうことだ。


ジョンを先頭にショウと梅木が後ろに付いて階段を上っていく。


階段は丈夫な作りとなっており、まるで洞窟の石を掘って作ったように繋ぎ目のようなものがまるで見つからなかった。


「人工的な物なのかな?」


指を壁に当ててそう首をかしげる梅木。


「もしかしたら、地盤沈下とかかもしれないぞ。」


地下に謎の遺跡のような空間が有って、それに飲み込まれるようにショウ達は落ちたのかもしれない。


階段の先は明るく、その先の様子が見えた。


二階と言って良いのかは分からないが、そこは、禍々しい木の生えた森にだった。


「地下に森っておかしくない?」


太陽の光もないのに不気味なくらいに明るい。


電灯や松明等の灯りもない。


天井も繋ぎ目の見えない平坦な石で出来ていた。


森の先は青く薄暗い。


木々が密閉空間の筈なのにサワサワと風に揺らされるかのように音を鳴らしていた。


「見て、これみんなの足跡じゃない?」


ということは、この先から悲鳴が……。


「どうする?


この先に進むか?」


ショウが訪ねると、梅木は首を振った。


「私たちだけじゃ危ないよ。


かなも連れてこよ?」


かなとは、竹下の下の名前だ。


「あ、かなとは従妹なんだ。


だから、私は姫で竹下さんにはかなって読んでるの。」


首を傾げていたショウにそう説明をする梅木。


「ね、先輩達もかなりの人数で纏まって動いていたじゃない?


私達もそうしようよ。」


梅木の意見にジョンも同意なのか、階段を引き返していく姿が目に入った。


「分かった。


細野はどうする?」


「みんなで交代でおんぶかな。


細野君、なんか重そうだから……。」


まあ、そういうことならとショウは頷く。


ショウも階段を降りてこの事を残っていた竹下と牧瀬、それから細野へと伝えたのだった。

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