薔薇の棘

 王弟が帰国の挨拶を王と皇后におこなう、それはなんら不思議のないこと。

 けれどもその際、私の手を取った時にそっと渡された小さな紙、それは普通でないこと。

 一人になるまで見つからぬようにと願いながら、早く確かめたいと願いながら、時を過ごしました。


 ようやく訪れた一人の時間に、幾重にも折り畳まれた紙を広げれば、「これを兄が口にする物に入れてくれれば、私は兄からあなたを取り戻せる」という短い手紙と、一回り小さな包み。

 遅い。こんな方法で手紙を渡せるのなら、どうして今まで何もしてくれなかったの。

 もっと頻繁に帰ってきて、挨拶に来てよ。


 これを夫に見せれば、あの方は反逆罪、王弟でも、王弟だからこそ、許されない。

 私が見なかったことにすれば、今までの状態が続くだけ。

 これを使えば、あの方に10年以上経った今でも想っていますと伝えられる。けれども、失敗すれば私もあの方も反逆者。


 その判断を私にしろと仰るのね。

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