だって僕はNPCだから +プラス
枕崎 純之助
(前編)魔女と聖女がかわいすぎて目が幸せです。
「ちょっとアル。この服どうよ。か、感想を述べなさい」
「アル様。私の装いはいかがでしょうか。へ、変じゃないでしょうか」
僕は二人から同時に声をかけられて背後を振り返った。
そこにはいつもとは違う服装で着飾った二人の少女が立っていた。
ひとりは恐ろしい闇の魔女ミランダ。
もうひとりは清らかな光の聖女ジェネット。
二人はまるで正反対の対照的な雰囲気だったけど、一つだけ共通点があった。
それは二人ともメチャクチャかわいいってことだ。
僕はアルフレッド。
このゲーム世界に住むNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)で職業は王国に仕える下級兵士です。
NPCってのはゲーム内に出てくるプレイヤー以外のキャラクターのことを言うんだ。
要するに僕はゲーム世界に生きるキャラクターなんだよね。
そんな僕の職務内容はこの洞窟で魔女ミランダを見張ることなんだけど、先日起きたこのゲームを揺るがす大事件が無事に解決して、
今日のミランダはいつもの
シックな色調だったけどミランダらしからぬ可愛らしい服装に僕は思わず目を奪われる。
一方のジェネットも基本装備
もともと
そんなジェネットを見つめる僕は、
「コラッ! こっち向きなさい。そんな
「イテッ!」
首が変な角度に曲がるんじゃないかと思うほどの勢いでミランダは僕の顔をつかんで無理やり自分に向き直させる。
く、首が折れるって。
相変わらず乱暴だなぁ。
それはともかく、どうして彼女たちが普段と違ってこんな服装をしているのかというと、今日はこのゲーム内であるイベントが
そのイベントというのは女子キャラ達が普段の衣装とは異なるファッションで人気を競うという、言わばミスコンの類のものだった。
「ったく。何でこの私がそんなくだらないイベントに参加しないといけないのよ。闇の魔女をナメんじゃないっての」
本日のミランダはすこぶる不機嫌だった。
それもそのはずだ。
彼女は恐れ多くも人々に恐怖を与える闇の魔女であり、こんな和やかなイベントに出場するようなガラじゃない。
けれど彼女は先日の大騒動を巻き起こした張本人であり、本来ならば罪に問われるところを運営本部からの
一方のジェネットも慣れない服装に居心地悪そうにしながら
「私もあまりこうした
主っていうのはこのゲームの開発に
僕と同じゲーム内のキャラクターであるミランダとジェネットが、このイベントに参加することに決まったのは、つい数時間前のことだった。
いつものように闇の洞窟でミランダに挑戦する訪問者を待っている僕ら3人のコマンドウィンドウに、ある通知が飛び込んできたんだ。
『衣装コンテスト参加者の皆様へコンテスト用の衣装チェンジャーをお送りいたします。衣装チェンジャー使用後はライブカメラを派遣いたしますので、各位、衣装を
だけど運営本部やジェネットの主である神様からの参加要請を受け、二人とも渋々これに参加することとなったんだ。
ほどなくして同時にミランダとジェネットの二人の腕に見たことのない青い腕輪が装着された。
ミランダはその腕輪を見てフンッを鼻を鳴らす。
「何よこれ。これが衣装チェンジャーってやつかしら」
「これで衣装チェンジをするのですね」
そう言ってジェネットは僕の方を向いた。
「アル様。今から着替えますので少しの間、後ろを向いていて下さい」
「こっちを向いたら殺すわよ。アル」
はいはい。
分かってますよ。
僕は
ちなみにコマンドウインドウに記された説明書によれば、衣装チェンジャーはコマンド一つ入力するだけで瞬間的に衣装を変更することが出来る。
いちいち本当に着替える必要はないらしい。
だからまあ、わざわざ後ろを向く必要もないんだけど、そこは女子の着替えだしマナーを守らないとね。
ところで一つ疑問があった。
どういうわけか僕まで衣装チェンジャーが腕に装着されていたんだ。
な、なぜ僕まで(汗)。
女子のコンテスト向けのものだから僕が持っていても無意味なのに。
多分、何かの手違いなんだろうな。
後で返却の手続きをしておこう。
僕が背を向けている間、二人はああでもないこうでもないとチェンジャーを使って衣装チェンジを続けている。
背後から聞こえてくる二人の様子に僕はクスリと笑ってしまった。
とてもアクの強い二人だけど、何だかこうしていると普通の女の子だな。
「もう終わったから、こっちを向いていいわよ」
どうやら着替え終わったらしいミランダからそう声をかけられ、僕は振り向いて彼女たちの衣装を見つめた。
それが冒頭での出来事だった。
二人とも日頃は
「あ、あんまりジロジロ見るんじゃないわよ。アル」
「照れてしまいます。アル様」
二人は少し
「こ、ごめん。でもすごく似合ってる。二人とも」
ジロジロ見るなと言われても、そうせずにはいられなかった。
だって二人ともイメチェンのせいか、いつも以上に可憐でかわいらしかったんだ。
そんな二人が並ぶその様子は、見ているだけで幸せになれる
目が幸せを感じます。
この時はまだ、この後あんな悲惨な事故が起きるだなんて思ってもみなかった。
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