女神に拉致され祝福と呪いを貰った件。〜楽しい異世界生活を……送りたい〜
七浜ユウキ
第1節 進路希望用紙
いつもと何も変わらない日常の中。
その少年は目を覚ました。
眠そうな顔でスマホの画面を開いた
(8時30分…………えっ!)
少年はベットから飛び起きた。
「やばい遅刻だ……」
朝食をとるまもなく制服に着替え、最低限の身支度をし家を飛び出した。
自転車に飛び乗り、全速力で学校に向かう。
彼の通う高校はしがない地方の中級高校である。
自転車で30分で行ける距離にあり、家から一番近い高校ということで進学を決めるといったお決まりのパターンで入学した。
駐輪場に荒く自転車を止め、全速力で教室に向かう。
少年こと花節上人は体育科の生徒であり、柔道部に所属していた。
遅刻がバレた場合顧問から恐ろしい仕打ちに会うのだ。
教室につく数メートル前から走るのをやめ、気配を殺した。
そーーと後ろの扉から教室に入る……。
しゃがみこみ最後列にある自分の机に向かう。
席までもう少しという所で殺気を感じ、視線を向けると筋肉隆々の体育教師通称ゴリラが両腕を組みながらこちらを見ていた。
ちなみにゴリラはこの見た目でダンス部の顧問だ。
「おいカミト。俺の授業を遅刻して来るとはいい度胸だな?」
ゴリラが小さい子なら泣き出すような顔でこっちを見て言った。
「あっ先生おはようござ……いま……す」
少年はビビりながらも挨拶をした。
「よりにもよって進路調査の日に遅刻しやがって、お前ら2人は後で調査用紙を書いて、体育講義室来い」
「はい……ん?2人?」
「あぁこいつもだ……」
ゴリラは呆れ果てた顔をし、親指で指を指した。
「カミトーーー心の友よーーー!」
少年の名を呼んだのは吉田守、の幼なじみであり、親友だ。
マモルはサッカー部であり、イケメンで女子人気も高い……しかし頭が少し子供なのでみんなからはバカ認定されている。
女子はそこに保護欲を感じるみたいだが……。
「2人とも分かったな?」
「「はいっ!」」
2人は素晴らしい返事をした。
授業が終わり、休み時間になり、カミトとマモルはクラスメメイト数人と話をしていた。
「お前ら今日遅刻するのはないわ」
「可哀想にな体育講義室か……」
体育科にとって体育講義室は地獄に落ちる様なものなのである。
それぞれの部活の顧問たちもいる可能性が高くそこに呼ばれるということは死刑通知と変わらない。
他のクラスメイト達が同情の言葉をかけてくる。
「お前ら進路なんて書いた?」
マモルがクラスメイトに聞くと。
「うーん……適当にギャグ狙って書いたぞ。俺は総理大臣」
「俺は宇宙飛行士って書いたよ」
「よしじゃあ俺勇者って書くわ!」
マモルがそう言うとカミトは(こいつ恐れ知らずだよな……)と思いながらも自身もノリで冒険者と書いた。
幸い投票式なので中身がバレるのは数日たったあとだ。
子供じみた笑みを浮かべながら俺達は遊び半分で書いた調査用紙をゴリラの元へ持っていった。
体育講義室に入る時はノックを2回し、扉を開けたらクラスと名前を言い、要件を伝えなければならない。
「失礼します。2年花節上人です。林田先生に用があってきました」
「失礼します。吉田守です。同じく林田先生に用があってきました」
林田とはゴリラの名前である。
「おう来たか……入れ」
「「失礼します!」」
講義室に入るとゴリラが箱を出して、ここに入れろと指示してきた。
「お前らふざけたことは書いてないだろうな」
2人の目は泳ぎ、嫌な汗をかいていたが書き直すわけにもいかず、そのまま提出した。
その瞬間体に脱力感が襲った。
カミトはそのまま気を失ってしまったのだった。
目を覚ますとそこは薄暗い部屋の中だった。
「カミト!よかった!目が覚めたか!」
マモルが駆け寄ってきた。
「ここどこだ?」
「俺もわからん……ただ外に出る扉はない……」
あたりを見渡すと女の子が2人いた。
1人は起きているが怯えているのか動かない。
もう1人はまだ気を失っているようだ。
「調査票出した瞬間気を失ったんだよな」
「あー俺もそうだよ」
「これ偶然じゃないよな」
「だろうな……」
カミトとマモルは意見をまとめると蹲っている女の子に話しかけた。
「怖いと思うけど教えて欲しい。君の名前は?」
すると少女は顔を上げると「私は港葵です」と小さい声で答えた。
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