VRMMOのAIの場合


NLO(ネバーランドオンライン)



 その声に振り向くと、人とは思えないほど美しい存在がいた。

 いや、人ではないのだろう。絹の手ざわりがしそうな白い髪は少年のように短かったけれど、半ば透けるような衣裳を纏う嫋娜しなやかでほっそりとした肢体は少女のようで、“僕”という言葉づかいとあいまってどちらなのか戸惑わざるえなかった。

「僕は女の子だよ。みただけでわかってほしかったのにな」

 それは香しい花のように微笑んだ。

「あ……その、名前を聞いていい?」

「かなしいけどないんだ、キャラクターメイキングとチュートリアル用のAI だし。識別番号なんてぶすいでしょ」

 俯いた瞳にまつげが被さる。左が銀で右が金、いわゆる金銀妖瞳ヘテロクロミアだった。

「ご、ごめん。わるかったかな」

「ねえ、君がつけてくれるかい?」

 ふわりと纏わりつく微風のように身を寄せて腕にふれる。水仙ナルシス鈴蘭ミュゲの香りがした。

「そしたら僕は、君に仕えてあげられるよ」

「どうして、そこまでするんだ」

「君は綺麗な子だし、気に入ったちゃったんだ」

「リアルがどんなかしってるだろ」

「そんなの関係ない。いまのその姿は君の心が形づくったものだよ。ねえ、君は僕が嫌い? 君はきっと僕を好きになる。うんん、もう好きになった」

 ひっそりと囁きながら、こちらの眼を覗き込んだ。

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