第69話 醒めない夢

69.

~果歩が消えた日から 20



 仲間友紀に自分達の、俺と果歩の家庭を壊され俺は

友紀に復讐した。


 金だけ引き出したら捨てるつもりで結婚した。

・・と友紀には思わせておいてその実籍は入れてなかった。


 事実婚は友紀から引き出せる金が無くなるまで続けた。



 金の切れ目が縁の切れ目とばかりに、友紀を追い出した。

 後悔は微塵もない。やってはいけないことをしたのは

あっちが先なんだから。



 あいつのせいで果歩が娘を連れていなくなってしまった。


 友紀の金も全部店の借金に注ぎ込んだがあきれるほど

俺には経営者として再建できるほどの才能はないようで

借財は膨らむばかり。



 それで友紀を追い出した後、すぐに店は畳み、派遣で

仕事に出るようになった。正社員登用の道の無い、いわば

飼い殺しのような不安定な身分ではあったが、少しずつ

借金を返済し細々となんとか暮らした。



 金が無いというのは本当につらいものだと思い知った。

 女も男も誰ひとり寄り付きゃあしない。侘しいひとり

暮らし。



 時たま、街行く子連れの夫婦を目にすると、忸怩たる

思いに苛まれ、辛かった。


 まじめにさえしていれば、俺にだってあれくらいの

ささやかな幸せがあったのに。


 失くしたのは全部身から出た錆。


 木枯らしが吹き荒れる季節になり、ふと鍋をしてみる

気になりドライブがてら鍋を探して車を流した。





「くっ! 果歩っ」


とあるShopの駐車場で果歩を見かけた。


 髪が長くなっていて雰囲気が違って見えるので

自信は無いけど。果歩らしき女性をだ。


 前に歩いて行く女性の肩を斜め後ろから叩いて

問い掛けた。



 「果歩っ! 」 



 18年の歳月が流れ老けてはいたが、目の前にいる女性は

確かに俺の記憶のなかの果歩だった。


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