第64話 醒めない夢

64.

~果歩が消えた日から 15



 何なのあの私を馬鹿にしたような態度。私、あんたが

思う程馬鹿じゃないんだから。


 バァ~カ!


 こんなこともあろうかと婚約者の達彦ちゃんには、もう少し

仕事したいからって婚約延期してもらってたのよン。


 婚約破棄なんてしてませんから。あんたみたいに何度も

お金をせびってこられたら、いくらボンヤリさんの私でも

おかしいって思うわよ。


 達彦ちゃんを保険にとっといて良かった。心の底から

そう思った。もともと達彦ちゃんと結婚するはずだったん

だし、少し伸びただけのこと。


 籍も汚れてないみたいだし、わたしにしたら万々歳だよ。

 私はまだ若い。やり直しなんていつでもできんのよ。


 妻から捨てられたあんたとは違うんだよ。私はそう毒づき

ながら捨てられた鬱憤を晴らし、その足で実家へと向かった。



 実家に戻ってからしばらくして落ち着いた頃、これまでも

怪しまれないほどには会ったり連絡を取ったりしていた

達彦ちゃんに、会ってぼちぼち結婚の話も進めたいなぁ~

と電話した。




 喜び勇んで駈け付けてくれると思ったのに達彦ちゃんの

返事はそっけなかった。

 2ヶ月前に会った時は私に会うことが決まるとすごく

喜んでくれていたのに。



 一体どうしたんだろう?



・・



 本当なら約1年ほど前に結婚していたかもしれない幼友達の

仲間友紀という婚約者がいる。同い年で若いこともあって

婚約期間を1年延ばしてほしいとお願いされそれをのんだ。


 俺としては一日でも早く結婚したかったんだけどね。

 すっごい好きな相手で1mmも嫌われたくなくて

物分かりのいい顔をして了承したんだ。


 それなのに友紀は年上のそれも既婚者とこの1年同棲してた。

一連の流れて興信所に頼んでた結果が1週間ほど前に出たところ

だった。


 だから突然昨日結婚したい、と結婚のことを仄めかす発言が

あってびっくりした。

 今暮らしてる男のことは?

 どうするつもりなんだ?


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