第28話 醒めない夢

28.

~深山康文と果歩の結婚生活  (25)



 万が一?

 ううん十中八九夫の事業が失敗した時

私の収入が私たちの生活を支えてくれるであろうことは

想像に難くない。



 なので、この先夫が人手のことで私に矛先を向けて

くる日があろうとも、仕事を辞めることは・・絶対しない。


 このことだけは、絶対に譲ってはいけないと肝に

銘じている。


 浮気に走るわ、仕事は勝手に辞めるわ、新しい事業を

するのに自分のお金も無いのに妻に相談もしないわ

自分の意見を無理やり押し通そうとするわ、こんな夫(おとこ)

信じられる?

NO~・・ノーよ。



 信じて何でもはいはい、言うこと聞いてたらきっと先で

えらい目に合わされそうな悪寒・・じゃなかった、予感

がする。


 ホントに世間知らずの夫はどこまで迷走するのやら。

 いつが来たら平穏な日々が来るのかと悶々と日々を

過ごすばかりだ。




 こんな一大事、もし失敗して破産でもしようなら

首が回らなくなり結局はお義父さんたちに尻拭いして

貰う羽目になるのは目に見えている。


 だから、義ご両親に相談してからにしましょう、と夫に

言った。


 最初は自分の仕事なんだから親に相談するっておかしいだろ

とかなんとか、行き渋っていた。

 だけど、自分は1円も持っておらずお金の問題が進まないと

知ると義実家へ足を向けた。



 相談には夫一人が行った。


 夜家に帰ってきた夫の顔は暗かった。

 義父や義母から反対されたんだと思う。


だって、誰が考えても・・。

 


 「果歩が行け行け言うから行って来たけど

行かなきゃ良かった。

 猛反対されたよ、父親にも母親にもね

散々だったぁ。


 浮気して一流企業捨てるようなことして、次は我慢が

足りなくて折角拾ってくれた会社を喧嘩して辞めて

・・ンで次はなんだぁ、資金も無いのにオーナーって?

世間舐めてんのかってさ」


 「じゃあ、お金はお義父さんを頼れないよね」


 「いくら持ってンの?」


 「いくらって?・・」



 「親父から譲渡されてる金のことだよ」



 「200万円」



 「もっと貰ってるんだと思ったけどな・・」



 「一度だといろいろややこしいから、これから少しずつ

くださるって。だから今は200万円しかないの」



 「次はいつ、幾らくれんの?」



 「そんなの取り決めしてないから判らないわ」



 「じゃいいよ、取り敢えずその200万貸して」



 「やっぱり、コンビニ・・するの?」



 「誰が反対しようと、やるったらやるんだよ。

もう人に使われんのは真っ平なんだよ」



 義父親に反対されてもやるらしい。

 こりゃぁ、私ごときが反対しても駄目だなと諦めた。


 まだ夫が店をはじめてもいないのに、不安で仕方なかった。

 一体どうなってしまうんだろう。


 案外大沢氏のように上手くいって・・とか楽観的に

考えられない自分が恨めしくさえあった。








 



 

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