第16話 醒めない夢


16.

~深山康文と果歩の結婚生活 ⑬


    

 反省?



 反省という言葉は無いンだな?


 反省という言葉を持たぬ俺様な夫は言い放つ。




 「どうしてこんなことしたの?

 クビだよ? 俺。

 どんな思いで入った会社だと思ってンの。

 ただの遊びなんだからさぁ、俺の気持ちが落ち着くまで

待ってくれりゃあよかったんだよ。

 飽きたら、止めたのに・・」




 はぁー!!!


 呆れるばかりの言葉の羅列に果歩は・・顎がガクッと

外れそうになった。



 単身赴任前の・・

 若い(女子)子との遊びを知る前の・・

 私の知ってる真っ当な人間だったはずの夫は

どこへ行ってしまったのだろう。


 今私の目の前にいる男は一体誰なのだろう。


 若い肉体に溺れている最中の男性は、もう妻の知っている

夫ではなくなるとwebsiteに書かれてあったのだけれど

シタラリ期とでも言うのだろう、まさしく今の夫がそれだった。



 女と引き離されて日本に帰って来た夫は会社もクビになり

次の会社を捜す羽目になった。



 会社は勿論のこと、私の両親や自分の両親にまでも私の直訴で

浮気が知られてしまい、自業自得とはいえどこにも身の置き所の

ない状況になっている。


 そんな夫はすこぶる私に冷たい。

 家に居ても最小限の会話しかしてこない。




 つらい。

 すごく辛くて精神的にキツい。


 だけど、それでも女との関係が続くよりはずっとマシだ。



 私にやさしくしてくれて、私を大切に想ってくれていた夫が

恋しくてたまらなかった。


 私は夜になるとめそめそ泣く日が続いた。

 なのに、そんなに悲しくて悔しいのに不思議と離婚の二文字は

浮かばなかった。




 しばらくすると、あんなにイライラ感が半端無かった夫の

雰囲気がある日を堺にガラっと変わったのだった。


 相変わらず会話は少なかったけれど。


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