第17話 醒めない夢

17.

~深山康文と果歩の結婚生活 ⑭



 そういった変化と共に、不貞腐れて積極的に動こうと

してなかった夫がハロワ通いを始め、会社の面接へ行くからと

比較的早くに家を出て夕方に帰宅するようになった。



 安心したのも束の間、徐々に帰宅時間が遅くなっていき

それと共に出かけて行く時間も遅くなり

午後から出かけて23時24時帰りが当たり前になっていった。



 そして私たちの関係はさほど変わらずにいた。

 相変わらず必要最低限の会話しかない。



 就活ごときで毎晩深夜のご帰還って?

夫に問い詰めても逆ギレするだけでちゃんとした返事を

返してくるとも考えられず、私は母親に娘を預けて

ある日、夫の跡をつけてみた。



 ハロワにちゃんと入って行った夫の姿を見て胸を撫で

下ろした。


なのに・・


14:00-新築高層ビルになっている市役所から徒歩2分の

   立地にあるハローワークに入る

14:20-出てくる

14:30-右手に少し歩いたところで信号待ち。

   そして車道を渡り少し右方向に向かいカフェに入る



 この様子を私は夫が出て行った反対側の路上から

こっそりと見ていた。


 えーっ!もう休憩するんかいっ。

 無職なのにカフェ、むしょくなのに!



 たった20分のハロワ滞在の上に面接もこなしてない。

 ついさっき安堵した私の胸に漣(さざなみ)がたった。


 

  ここは一服したいなら、せいぜいが自販機の

缶コーヒーだろう、そう思ったから。



 無収入で就活している人間でしょ?

 妻も子もいる身でどうしてそんなことが出来るのか。

 私はカフェには入らず店の外で待つことにした。

 ガラス戸で中と外のオープンスペースとが合体されている

店舗は車道沿いにありその上人通りが少ないので助かった。

 

 直接店舗の前ではなく、オープンスペースのある

少し店内からは離れた場所から夫の様子を伺った。


 上手い具合に夫の座った席は私からよく見える。

 不自然にならないよう店舗のオープンスペース側の前を

行ったり来たりしながらcheckした。



 そんな私の目の前に、明らかに日本人には見えない若くて

綺麗な女性(おんな)が店に現れた。



 「えっ? 」


 胸の中に不安がブァ~っと拡がっていった。

 私の不安はすぐに現実のものとなった。



 夫を見つけた女性(おんな)は、夫と同じ席に迷いなく

座った。



 すぐにふたりは顔を近づけて恋人のように手を握り合い

イチャイチャしながら何か楽しそうに話し出した。



 私には一切向けられないうれしそうな顔の夫がそこにあった。



 いやぁー、もう嫌だ。

 嫌だ・・いやだ。



 まさかと思い、付いて来たけれど

こんな場面を見せ付けられるなんて我慢ならなかった。





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