いまどきパソコン使えないゾンビはいないよね?

ちびまるフォイ

ゾンビに隠された秘密

研究員が間違ってトイレにゾンビウイルスを流し

世界にゾンビが拡散されて数か月。


世界の人口はゾンビと人間が逆転していた。


「あ゛あ゛~~……腹減ったなぁ」


「人間食べてないもんな」


「最初の頃はよかった……。

 手あたりしだいに人間を食うことができたけど

 いまじゃどこを見てもゾンビばかり……」


ゾンビ友達につい愚痴ってしまう。

ゾンビ化はじまりの時のように人間を見境なく襲えた時が懐かしい。


「お前、ゾンビニュースは見てる?」


「なにそれ?」


ゾン友がテレビをつけるとアナウンサーゾンビが映った。


『次のゾンビニュースです。

 北の○△居住区にて人間がいるとの情報です』


『人間は最近地下に居住区を移した模様です。

 人間を探すときは、隠し扉に注意しましょう』


ゾンビアナウンサーは情報をどんどん告げていく。


「こんなのがあったのか゛!」


「あ゛あ゛、これで人間の情報がわかるだろ?」


「こころのゾン友よ!!」


お互いの腐敗臭をなすりつけあうゾンビハグをした。

これで俺も久しぶりの人肉を口にすることができるはず。




さっそく、ニュースにあった居住区に向かってみると

すでに食い散らかされた残骸が残っているだけだった。


「え゛え゛……遅かったのか」


ゾン友はすでに到着し、口の周りを血で赤くしている。うらやましい。


「ちょうど人間を食い尽くされたところだよ」


「ちくしょう。今度はもっとはやく察知しないと」


この失敗を糧に、ゾンビニュースを見てすぐに場所に向かうが

人間と遭遇するよりも「食べ残し」となった人間ばかりご対面する。


「なんで俺だけありつけないんだよぉぉ!!!」


ゾン友は人肉にありつけて、俺は残骸ばかり。なにがちがうのか。

そんなのは考えればすぐにわかることだった。


「あ、そうだよな。みんなゾンビニュース見てるから競争率高いよな」


ゾンビニュースは全国ネットなので、

俺が移動するよりも早く近くにいるゾンビたちは到着してしまう。


ということで、今度はニュースが出るよりも先に

これまでのデータをもとに人間の居住区を先読みする。


「ふふふ、ニュースが出るよりも早く動き出せば

 今度こそ人間を食べることができるはずだ」


これでも元は人間だった。

同じ人間の思考や行動パターンを読み取ることなどたやすい。


「ようし! 次はこの場所だ!!」




ゾンビニュースで報道されるよりも早く現場に行くと

すでに長蛇の列ができていた。


「なんじゃこりゃあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


「みんなニュースで情報が出るよりも早く、

 人間の居住区を予想してやってきてるんだよ」


折り返してきた列の最前列にいるゾン友が教えてくれた。

そう、俺のように考えるゾンビはほかにもいたということだ。


「それにゾンビSNSで人間情報はリアルタイムで

 ニュースよりも早く回っているし」


「ゾンビSNS!?」


なんてこった、そっちがあったか。

ニュースを先読みして現場に向かっても

今度はゾンビSNSの情報をもとにやってきたゾンビがいる。


どこまでいってもゾンビ競争相手が減ることはない。

いつになったら人間を食えるのか。


「いいだろう……この俺を本気にさせたようだな……。

 いいぜ、お前らが人肉独占するっていうんなら、まずその幻想をぶち食い荒らす!」


かつてIT企業に勤めていた社畜根性が炎のように燃え上がった。

ここからは情報戦争だ。




ゾンビニュース、ゾンビSNS、ゾンビ週刊誌……などなど。


ありとあらゆるゾンビ情報網に偽情報をそれっぽく流す。

ゾンビ情報ノイズを増やしてライバルを削りまくり、

本当の人間情報は自分だけわかるというまさに現代の情報戦。


「これで誰も本当の人間居住区を見つけることはできない゛!」


情報をあやつる俺だけが本当の場所を知る。

そして、本当の人間の居住区に向かうとゾンビがいなかった。


「やった! ついに1番のりができたぞ!!

 俺はゾンビ情報戦に勝利したんだ! やったあ゛!」


大喜びしていると、血煙の向こうからゾン友がやってきた。


「え゛え゛!? そんな!! 俺より先に到着していたのか!?」


「ああそうだよ」


俺の情報を見抜いて真実の情報だけを抽出するなんて……すごすぎる。

完敗だ。これ以上の情報強者はいないだろう。


「後学のために教えてくれないか?

 どうやって人間のいる場所へ先回りできたんだ?」


俺が聞くとゾン友はあっさり答えた。




「いや、俺、走れるタイプのゾンビなんだ」

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