(拓馬・はるな編)
メッセージ13 繋がれた想い ①
【 はるなの視点 】
朝の7時、目覚ましが朝を告げる。昨日の残業疲れなんてなんのその、今日はすっきりと目覚めた。彼に会える大切な日に、疲れた顔なんて見せられない。
洗面台で顔を洗い、昨日の素顔をリセットする。そして鏡を見る。
(あっ!目立たないけど小じわが、こんな所に・・・・)
見なかった事にしたいけど、とりあえずとびきりの笑顔をつくる。
(うん!自慢の笑顔でこの辺はフォローだよね!)
「おはよう! “ にゃにゃ丸 ” 」
ソファーでふて寝をする愛猫に朝の挨拶。部屋着に着替え朝のニュースを見る。部屋のカーテンを開けると朝の日差しがとてもまぶしい。
「今日は絶好のデート日和ですね!」
(朝食を軽めにすまそう)
そう思いトーストを焼き始める。
朝のニュースを見ながら、朝食をすませる。
「そうだ!今日は何を着ていこうか?外はあんまり寒くなさそうだしな・・」
テレビや、雑誌を見ながら時間が過ぎていく。すると早速彼からのメールが届く。
【 拓馬の視点 】
休日らしい晴天、久しぶりにはるなさんの顔が見られます。考えると胸がわくわくドキドキしてきます。はるなさんには家を出る前にメールを入れておいたので心配はない。
〈はるなさんおはようございます。久々に晴れ晴れとした、今日の天気のようなあなたの笑顔を見ることができますね。今から家を出ますので駅に着いたら又、ご連絡いたします〉
〈おはようございま~す。(^^)/ わかりました。私も会うのが楽しみです。もし早めに着いたなら、連絡をください。拓馬君は車で来るのかな?気をつけて運転してね〉
はるなさんから元気のいいメールを貰って、いよいよ楽しい旅が始まった。
只今午前9時過ぎ。お昼に待ち合わせなので、間に合うように車に乗り走り出す。東西にまっすぐにのびた道は、休日ともなると車で混雑していた。
思えば幾度となく通ったこの道も今では、僕にとっての大切な運命の道となっていた。
冬空の晴天の中、やがて1時間も走ればなだらかな山のすそ野が広がる美しく賑やかなあの人の住む町が僕を向かえてくれるだろう。
【 はるなの視点 】
彼への返信をした後素朴な疑問が頭をよぎった。
(そう言えば拓馬君っていったい何処に住んでいるのだろう?)
(とりあえず私も準備をしましょうか。今日は気分もいいし化粧だって、ばっちり決まりそう。)
「さてさて、今日はどんな服を選んで、着ていこうかな?」
クローゼットの中からベストなファッションをコーディネイトする。
「今日は女らしくシンプルに行こうかな」
オフホワイトのセーターにツイードチェックの黒地のスカート、でも何か足りない。
(・・・そうだ、帽子だ!)
何にしようかすごく悩んだ。鏡を見ながら数ある帽子を手に取りあれ、これと選ぶが、今日の服装に似合った物がなかなか見つからない。結局時間だけが過ぎていく。
【 拓馬の視点 】
いつものようにこの街に着いた。駐車場に車を止め待ち合わせの駅の改札口に歩き出す。予定より30分早く着いてしまったが、遅刻するよりはいいだろう。
そしてはるなさんの携帯に連絡する。
「もしもしはるなさん?あっ!拓馬です。今着きました。はい!改札口で待ってます。いえ!大丈夫ですゆっくり来てください」
改札口でしばらく彼女を待つことにしよう。
休日のせいか駅の中は家族連れや、若い人達で混雑していた。北に行けば温泉街、西の山々を越えればリゾート地域、南が都心にアクセス出来るこの駅は3つの路線が交差するターミナル駅になっている。僕の住む町と違って随分と華やかな街である。
【 はるなの視点 】
午前11時過ぎに拓馬君からの到着をつげる携帯電話が鳴る。
「拓馬君早い!もう着いたの?」
「それじゃ私も今から家を出るから、ごめん、あと20分ほど待っていてくれないかな?」
急いで支度を済ませるそして鏡をみて最終チェック!自然に笑顔になっている私。でも何か足りないものがあったよね?
「あっー!!帽子!帽子!どーしよう・・・・」
ふとクローゼットの片隅に置いてあったニットキャスケットの帽子が目にとまる。
「あっ!これたしかお姉ちゃんからのプレゼントだ!かわいい・・・これにしよう」
コーディネイト終了!もう一度鏡をのぞく。
「うん!大丈夫だね」
私の家から駅までなら歩いても行ける距離だけど、あまり彼を待たせるのも失礼だと思い、とりあえずタクシーを拾う。
5分もタクシーに乗ったら駅前に到着する。そのまま改札口に急ぐ。久々に彼に会う事を考えたら、少しドキドキしてきた。駅中はたくさんの人で賑わっていた。
(拓馬君はどこだろう?)
彼を探し周りを見回したが、なかなか見つけられない。
(あれ・・かな?)
紺色のストライプのシャツを着た彼の姿をやっと見つけた。
「拓馬君!こっちこっち!」
私は彼に気づかれようと大声で手を振った。
「あっ、はるなさん!」
久しぶりの再会、変らない彼の表情があった。
「少し早く着いてしまって。」
「いいのいいの、お腹すかない?ご飯食べにいこうよ?」
「はるなさん・・・」
彼が何かいいかけた。
「えっ!なに・・・」
「素敵です。その・・・服も帽子もよく似合ってます」
(うれしい・・・彼が私の服を誉めてくれた。)
「ありがとう!私帽子が好きなんです。今日もどれにしようかと悩んだのだけど・・・」
(やっぱりこの帽子で良かったみたい)
【 拓馬の視点 】
僕達は昼食を取る為に彼女が勧める和風のレストランに立ち寄った。
「拓馬くんここ入ろうか!こないだ友達と来た時美味しいお料理だったから、誘ったの」
「いらっしゃいませ!2名様ですか?」
お店の店員が聞いてきた。
「はい!」
僕達は二人声を合わせて、お互いに照れ笑いした。座敷に座りメニューを注文する。
「ぷっ!ははは・・・」
はるなさんがいきなり僕の顔を見て笑った。
「えっ?僕の顔に何かついていますか?」
「そうじゃないの!ほら、この間の携帯の電波が悪い時のことを思い出しちゃって・・」
「あの時本当にそんな風に聞こえたんですか?」
「本当よ!た・す・け・て・はるなさーんてね?」
「へえ~、だとしたら僕はずいぶん情けない男に聞こえたでしょう?」
「そんなことないよ、私だって何かあった時は、一番大切な人に連絡すると思うよ」
「はるなさんの大切な人って、お姉さんかな?この間お世話になっちゃったからね?」
(それとももっと大切な人がいるのかも?・・・)
「そうだね。お姉ちゃんとは住んでる場所は近いけど、普段は会いには行かないよ。この間は久々にお姉ちゃんに甘えたくなったのかも・・・」
「拓馬君はきょうだいはいるの?」
「5つ違いの弟がいます。弟とは離れて暮らしているので今はあまり話はしませんが」
【 はるなの視点 】
(男兄弟ってそうなのかも。拓馬君の事はまだまだわからない事が多いから、今日は色々と聞いちゃおうかな?)
「そういえば拓馬君って、何処に住んでるの?」
(そうそうこれが一番聞きたかった事)
「ここから車で片道2時間30分くらいかな?」
「え?そんなにかかるの?もしかしたら栃木県方面?」
車に乗らない私は時間の感覚がよくわからなかったが、かなり遠方なのはたしかだと思った。
「その先の茨城県です!」
「い、茨城県!!えっ、それって本当?」
(うっそ~!い・ば・ら・き・・・?私の中で茨城県のイメージはたしか大洗の海と、水戸の黄門様と、名産は納豆だよね?あとなんだっけ・・・?)
「僕は長距離ドライブが好きで、色々と走るのが楽しいんです。温泉も大好きだから、ここからなら通えるじゃないですか。ははは・・」
(いえいえ!それって全然笑えないから・・・・)
「拓馬君・・・・大丈夫なの?」
私は真面目に話した。
「えっ!何がですか?」
「そんな遠くから私なんかに会いに来て、大変じゃないの?」
そんな私の考えとは裏腹に彼の答えを聞いてちょっと感動した。
【 拓馬の視点 】
「大変なんてとんでもないです!僕ははるなさんを大切な友達と思っています。その友達に会いに行く為なら、距離や時間なんて問題じゃありません」
「僕は地元より遠方に知人友人が多いんです。気軽に行ける距離じゃないけど」
「拓馬君が羨ましいな・・・」
はるなさんは寂しそうに言った。
「私も遠くに友人がいるけど、旅行でもしない限り会いに行けないよ。免許も持ってるけど私ってペーパードライバーなの!だから移動は電車かバス、愛車といえば赤い自転車ぐらいかな?雨が降ったら乗れないけどね」
「この街を移動するなら自転車で充分ですよ」
たしかにこの街は利便性に優れた都市型の街で、観光客などでいつも賑わっている。
そんな都会に住む彼女の生活の中では、移動する手段は色々選択が出来て不便さを感じないのだろう。僕の住む田舎の町では車がないと生活が成り立たない。
はるなさんはソフトドリンクを飲みながら一言僕に言った。
「拓馬君の言うとおり。本当の親友って離れていても分かり合えなければ親友なんて言えないし、遠いから友達になれないなんてそれは言い訳だね」
彼女ははにかみながらそう答えた。
【 はるなの視点 】
「僕は距離なんかより友情を大切にしたいと思います・・はるなさん!これからも友達として・・・お付きあ・・」
「おまたせ致しました・・・」
突然彼が何か言いかけたが、注文した食事が運ばれてきて言葉をつぐんだ。
私はちらっと、彼の顔を伺ったが、気まずそうにしていた彼を勇気づける様に元気よく答えた。
「わあー!美味しそう。ねっ!拓馬君食べよう!」
「あっ!はい・・」
(気になるな・・・彼がいいかけた言葉。何だろう?)
「それで、お友達として何かな?ん・・」
私は言葉の続きが知りたくて、質問しながら彼をみつめた。
「あっ!いや・・お友達としてこれからも、あなたに・・会いにきてもいいですか?」
(えっ?もっと違う彼からの答えを期待してたのに・・・まあいいか)
私は料理をひとつまみしながらどう答えようか考えた。
「私こそよろしくね!そんなに遠くからわざわざ会いに来てくれるお友達なんて絶対にいないよ!大切にしなくちゃ」
そしていつもの笑顔を見せながら答える。
「拓馬君!あらためまして、群馬県にようこそ!この街はもう慣れましたか?」
私は、テレビで見たどこかの女子アナのインタビューを真似て彼に質問した。
「この街は結構来てるつもりですが、まだまだ右も左も分かりません。できれば街全体がよく見える場所に案内してくれると嬉しいのですが」
「そうね~・・・あっ!いい所があります。じゃあご飯食べたら行きましょうか?」
(絶好の場所があった。あそこなら、拓馬君も喜んでくれるはず)
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