(はるな編)

メッセージ5 秋雨と女ごころ

 秋の雨は嫌い!だってこんな素敵な季節なのに心の底まで雨に濡れているみたいで気分が重くなります、それに予定を変更することがとても辛いの。

本当ならば親しい友人3人で紅葉狩りに行く予定だったけど、今日は完全に無理みたい。ほら!今にも雨が降りそう。


結局は駅ビルのレストランでひまつぶし、たわいもない友達どうしの会話で時間が過ぎていく。 これからどうしようか?ショッピングぐらいしか頭に浮かばない。


「それじゃ、これからカクテルでも飲もうか?」


酒豪のかおりが本音を漏らす。


「そんな!お酒なんて・・まだお昼過ぎですよ・・」


お酒が飲めない絵美は反対意見。


「寂しい女3人が雨の為に行き場を失いました、神様どうしたらいいんでしょうか?」


ふざけながらミクが笑いながら茶化した。


「ねえみんな今年もクリスマスは一人で過ごすのかな?寂しいよね?」

「あれ?そういうミクは一人じゃないの?」

「クリスマスなんて私の人生の予定表に入っていません!どうせ仕事だもの!」

「じゃ・・かおりは?」

「わたしゃ屈強な男飲み友がいるから。飲み明かす予定!」

「絵美は勿論一人だよね?」

「クリスマスは聖なる夜ですよ!部屋一杯にキャンドルを飾って、天使ちゃん達と楽しい夜を過ごすんです!」

(そっ・・そうなんだ?)


 絵美は天使に関して熱く語る天使コレクターで、少し不思議な子だ。


「そういう、はるが一番寂しいんじゃないの?」


かおりが私のおでこをこずいた。


「えっ?わ・・わたしだって会社のクリスマス会が毎年あるし今年は仮装パーティーもあるから今から楽しみなのよ」

「それじゃ!天使のコスプレ貸しますよ~羽が付いてて可愛いの!」


絵美がキラキラした目で答える。


「絵美って・・そんなのまで持ってるんだ?」

「持ってるんじゃなくって、私が作ったの!オーダーメイドですよ!」

「仮装の衣装が決まってよかったじゃん!それじゃみんな寂しくないよね?」


かおりがさり気なく言う。


「それより今からどうする?」

「そんじゃみんな持ち寄りでホームパーティーをやろう!」

「賛成!せっかく集まったんだし。でも誰の家でやるの?」


みんなそれぞれの顔を伺う。


「ミクんちは?」

「私?無理無理!実家だもん」

「絵美は?」

「えー駄目です!お酒持ち込み禁止です・・・」

「はるの家しかないよね?新居はどう、もう落ち着いたんでしょ?」


かおりが笑顔で言った。


「えっ!私の家!まだ片付いてないけど・・」

「それじゃ決定!じゃ今から買出しにいくよ!」


かおりの決断力で、あっというまに今日のスケジュールが決まってしまった。


「当然かおりはお酒も飲むよね?私の家、果実酒ぐらいしかないからね」

「そんなの当たり前じゃない!心配しないでお酒は私が買うから」


買出しをすまし外に出ると、すでにどしゃぶりの雨。駅前の通りは、色とりどりの傘の花が咲いていた。タクシーに乗りパーティー会場に向かう。


やがて私のお城に到着する。いつのまにか雨はやみ、雲間からお日様が顔をのぞき光のカーテンがきらきらと虹を照らしていた、私達の祝宴を祝福してくれているみたい。


「雨上がった見たい。ほら虹が出てるよ」

「ねえ!早く鍵を開けてよ!皆んなで空見て何乙女チックに酔ってるの?」


かおりが買ってきたお酒を抱えながら文句を言う。


「え?ちょっとだけ幸せを感じてただけよ」私、照れ笑い。


雨で突然予定が変わってしまった休日だが、今日というこの瞬間を大切に過ごそうと思った。私の一番の大切な友人と共に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る