第2話

「原田、一緒にサッカーしようぜ。」

「・・いい、本読むから。」


「態度笑いなー」「いいよ校庭いこうぜ」後ろで誰かがボヤくのが聞こえる。


でも、別にいい。


同級生と遊んでもつまらないだけだ。

本を読んでいた方が、絶対楽しい。


休み時間、僕は基本的に席に座ったまんまだ。


学校はいつもつまらない。


授業は退屈だしクラスメイトとは話が合わないし、

何より僕は、笑うことが苦手だ。


別に怒っているわけじゃないのに怖がられてしまったり、誤解されてしまったり。


でも別にいい。

その方が人にも話しかけられなくて楽なのだ。


「みんなで仲良くしましょう」なんて先生は言うが、

そんなのは絶対に不可能だ。

きっと先生も分かってる、けれどそう言わなければいけない。


だから、大人は嫌だな、と思う。


きっと僕たちよりもずっと生きづらい世界で生きているのだろう。

なんて想像すると嫌になって、首を振って考えるのをやめた。



「・・ねん、少年?」

「・・・ボーッとしてた。」


大丈夫?と心配そうに僕の顔を見るお姉さん。


「具合悪いとかはない?」

「全然大丈夫。本当にちょっとボーッとしてただけ。」


僕がもう一度そう言えば、そっか、とお姉さんは頷いて

「具合悪かったらすぐ言うんだよ~」と一言。


「何その言い方。赤ちゃんなだめてるみたい。」

「拗ねるなって。」


僕が少しいじければ、

お姉さんは楽しそうに笑う。



あの日から、学校の帰り道にお姉さんの所へ行くのが習慣になっていた。


僕が行くとお姉さんはやっぱりそこに座っていて、決して降りてこようとはしない。


僕はランドセルをそばに下ろして、

そして定位置となった石段に腰掛ける。


お姉さんとするのは他愛ない話ばかり。


「今日もいい天気だね〜」

「そうだね、でもそのせいで今日の体育はマラソンだった。」

「いいじゃん。体力つくし。」

「長距離は苦手なんだ。」


僕がそう答えればお姉さんは「貧弱〜」と笑う。

・・貧弱の意味が分からなかったけど後で調べることにする。


「・・お姉さんはいつもここにいるの?」

「んー、少年と出会った日から毎日。」

「そっか。」


お姉さんはいつも学校の制服を着ていて、

そのスカートには「高校」という文字が見えるから、高校生なんだという事は分かった。

・・・高校の名前の漢字は読めなかったんだけど。


それ以上の情報は何も教えてくれないし、僕のこともあまり聞かない。


別に不自由なことは何も無いので、いいのだけれど。

何故かたまに、そんな関係がひどく不安になった。

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