死にたがりの僕と助けたがりの君

君は・・・なぜ?

夕暮れ僕は、いつものように学校の屋上から身を投げ出そうと柵を越え立っている。

下校しようとしている人間、部活で精を出している人間、にこやかと教室で話しこんでいる人間、誰も僕のことに気づかない。

何度も何度も、僕はここに立っている。

今まで気づいた人間は、たった一人。

今日もまた僕が身を数センチ先の空間に放り出す前に現れるだろ。

だけど、僕は百を超える程身を投げ出そうとしているが、いつも決まってあいつが身を放り出した瞬間腕をつかむ。

きっと僕は、あの子に構って欲しくて今は身を投げ出そうとしている。

多分、本当に死のうと思っていたのは、十もないだろう。

けど、なぜだろういつも、身を投げないと助けてくれないのは。

まぁ、いつも通り身を投げ出そう。

僕は、身を数センチ先に放り出す。

あれ、なんでだろう。

いつもは感じない何もない感覚。

どうして、だろう。

まだ、手をつかんでくれないのは。

色々と考えたがすぐに一瞬の強烈な痛みにより僕は、この世から去ることになった。

なぜ、今回は助けてくれないんだよ。


僕の体に次第に感覚が戻る。

そっと目を開けてみるとそこには、僕のことを毎回助けてくれていた女の子の姿があった。

だが、よく見ると鏡に映った姿だったのだ。

すぐには理解できなかったが手にしっかりと握られている紙に、

『今日から百日間あなたの体になっています。』

と、だけ書かれた。

部屋を見渡すと日記がありなぜこのような事になったのかがつづられていた。

この本当の体の持ち主は、小さい頃から後悔が残る魂に成仏させるため体貸しをしていたらしい。

僕が次に感じたことは僕が好きになっていたのは自分だということだ。

日記の日付を確かめると感じていたことが確実の真実となる。

僕は自分のことを好きになっていたんだ。

でも僕は、まだ未練がある。

この女の子になりきって僕自身を生きたままにしたい、死にたくないんだ真実を知ってしまった以上未来を変えるんだ。

僕は、明日から自分が自殺を始めることを知っている。

そしてもう一つ、最後の日に自分を助ける事が出来ないことを理解してしまった。

一番需要なのは最後の日にどうやって自殺を止めるかだ。

このことを考えながら助け続けるしかない。

猶予は、九十八日だ。


僕は、色々試し助け続けたが一向に成果が無く折り返してしまった。

残り四十四日。

誘っても断り逃げてしまう。

どうやったら死ねこと自体を止めるのかが分からない。

いいや、分かっている。

だが、日記に書いていたことに反してしまうだから無理なのだ。

告白をしてしまえば絶対に自殺を止めるだろう。

今の自分にこの方法以外思いつかない。

一体どうすればいいんだ。

ゼロからなにも進まないどうすれば一になるのか。


助け続けもう、残り二十日になってしまった。

どうすればいいんだ、助けれる方法が全く出てこない。

今日助けに行くときに一つ提案をすることにした。

契約に少し反してしまうが人間関係を変えさせてもらおう。

自分を助けているだけでなくその後に行動をとるしかない。

でも、ずっとボッチだった自分が人が喜ぶことなんて分からない。

けれど、相手は自分だ。

きっと自分なら喜ばせることができるだろ。

でも、ミスをしてしまったら本当に飛び込んでしまうかもしれない。

僕は、助けてくれていた女の子が高嶺の花だったから好意を抱いていたわけで同じ目線に来られてしまったらもう・・・

だから、深くは踏み込めない助けたいのに助けきれない。

自分自身が分からなくなってくる。

深く考えれば考える程。


気づけばまた助けていた。

何かをしないと、自分はもう柵を超えさせている。

こうすればもう、すぐには死ねない。

僕は、自分に問いかける。

「あなたはどうして自殺したがるの。」

知っている、今の僕の姿の子に気に入ってほしいからだ。

だが、こんな質問はされなかった。

僕は、前のこと完全に覚えている。

何と答えるのか分からない。

「どうして分かってくれないんだよ。お前のことが・・・」

自分が、自身の本心を話すなんて。

思ってもいなかったことを言われ驚いた。

好きだった気持ちを言ってしまうなんて予想もしなかった。

僕は、気を落としながら家路についた。

残り、一週間。


毎日通っているが自分が自殺をしようとはしていない。

まず、この場にいないのだから。

どこにいるのか分からない。

残り、三日だ。


残り一日だ。

生きているのか死んでいるのかもわからない。

一体どうすれば。

いつも通り屋上に向かう。

そこには、自分がいた。

「やぁ。待っていたよ。」

自分が問いかけてくる。

「ずっと見ていた一週間ずっとな。同情して毎日来ていたんだろ。」

僕は、何も言えない。

言ってしまえば本心を言ってしまいそうだからだ。

僕は、死んで欲しくないだけだそれだけなんだ。

自分を助ける事がこんなにも難しいとは。

「何も言えないなら、僕はもう・・・」

自分が柵から身を乗り出す。

助けないと。

すぐに手を取る。

何とか手を握れたが柵越しではなかなか持ち上げれない。

少しづつ態勢を整えつつ持ち上げだす。

何とか持ち上げたがかなりの時間を使ってしまった。

柵を越させ僕の近くに手繰り寄せる。

「分かったよ、もう今日は時間が無いんだ。君は、明日この住所に来てくれ。」

僕は、自分に契約違反だが女の子の住所を教えた。

コレでボクはイキツヅけるハズダ

なにか、カラダガヘンダ

イシキガ・・・


元の姿の戻りベットに寝ていた。

だが、自室のベットではない。

病室だ。

まぁ、そうだったのか。

全てを思い出した。

今までの自分も女の子も自分だ。

比喩などではない。

その場で一人で自作自演をしていただけだったんだ。

それを無かったことにしたかったいっしんで夢の中で合理化していたんだ。

もう、疲れた。

だるい体を起こしベットから出ようとする。

突然病室のドアが開く。

「動いちゃだめだよ。君にも体を貸して私の命を助けてくれたんだから。助けてくれた人間が生きているなんて驚きだよ。私はこれから君に尽くしてあげるよ。でも契約違反したんだからしっかり償ってよ。」

彼女は僕に微笑みかける。

なんだ、夢じゃなかったんだ。

僕は、人のために初めて何かできて良かった。

誰かに見てもらえた。

僕は、一筋の涙が流れ落ちる。

僕はもう、過去は振り返らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

死にたがりの僕と助けたがりの君 @yunaeru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ