そして手汗(手掌多汗症)オフ会へ

 一体どうしたらいいんだろう? 簡単には治せないと思っていたけど、現実は厳しい。3つの治療法も使い果たしてしまった。がっくり肩を落とし、パソコンの電源を入れ、「手の平のみずうみ」にアクセスする。

 いつものように掲示板をのぞくと「オフ会」の話題で盛り上がっている。オフ会では、掲示板に書き込んでいるメンバーが集まって、飲み会やカラオケを楽しんでいるようだ。行ってみようかな? でもちょっと怖いな。顔も知らない人たちの集まりに参加するなんて。だけど、治療法が合わなくて八方ふさがりの今の状況を誰かに聞いてほしい。掲示板のやりとりを見ると、ひろしさんがオフ会に参加するか迷っている人に、こう書いていた。

「僕もずっと一人で悩んでいました。だけどオフ会に参加して、前向きになれました」

 その書き込みに背中を押され、次回のオフ会の参加ボタンを押した。


 朝起きて、内干していた洗濯物を手でさわり、乾いているかチェックする。だが手が汗でしめっているので乾いているのか濡れているのかよく分からない。ほんとにこの手汗には困ったもんだ。ふう、もう少し干しておくか。昨日コンビニで買ったサラダうどんを冷蔵庫から取り出す。つゆが入った小袋をちぎって開けようとするが、汗ですべってちぎれない。その小袋にはこう書いてある「どこからでも開けられます」。イラッとしてサラダうどんを冷蔵庫に戻し、ジャムの入ったビンを取り出す。パンにぬろうとジャムのフタを開けようとするが、手汗ですべって開かない。も~、俺に朝ごはんを食べさせてくれ!


 オフ会が近づくにつれ、ドキドキしてきた。一体どんな人たちなんだろう? 年齢も何をしてる人かもほとんど分からない。そもそも人と関わるのを避けてきたのに、初対面の人たちとうまく話せるだろうか?

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