手汗でごめん。でもやさしくして(手掌多汗症との闘い)
朝田新一
まえがき
「なめくじみたい」
僕の手の平を見た人によく言われる言葉です。なぜなめくじかと言うと、手の平にびっちょり汗をかいているから。手の平がなめくじのように、汗でぬらぬらてらてら光っているのです。他に言われたことがあるのが、同じく手が濡れているから「カッパ手」。そのものズバリ「ねちゃ手」なんて言う人もいます。散々な言われようです。
なめくじって。カッパにいたってはこの世にいない生き物です。「早く人間になりたい!」 僕には妖怪人間ベムの気持ちがよく分かります。
緊張しているから汗をかいている訳ではありません。テレビでサッカーの試合を見ていると、解説者が「手に汗にぎる戦いですね」なんて言いますが、こちとら常に手に汗にぎっています。春夏秋冬365日、常に手から汗が吹きだしているのです。
こう言うと「気にしすぎじゃないの?」と言われますが、そうではないんです。気にしなくても出ます。みなさんが自然に体に汗をかくような感じで、手から汗が出るのです。
どれくらい汗が出るかと言うと、手の平に汗の水滴がはっきり見えます。汗がキラキラ光って見えます。生命線も感情線にも、汗の川が流れています。手相というより、汗相です。
僕の手汗、れっきとした病気なんです。手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)という、舌を噛みそうな病名もついています。
まあ確かに気にしすぎな面はあります。どうしても汗の話題には鋭く反応してしまうのです。例えば「ぬれせんべい」と聞いただけで、ぬれ→濡れ→手汗と勝手に連想ゲームを始めてしまい、さらに手汗が吹き出す……ということはよくあります。反省。
こうしてキーボードを叩いていても、指先から汗がほとばしります。そして汗は水滴になり、乾いて塩となり、キーボードには白い塩がこびりついています。とくに何度も叩くエンターキーからは大量の塩が生まれます。伯方の塩ならぬ「手汗の塩」。
電車に乗っているとき、手の平を下に向けると汗でズボンがびちょびちょになるので、手の平を上にしています。まるで大仏。
学生のときはテスト用紙が汗でふにゃふにゃになって最後にはビリッと破けるし、逆にポテチの袋はすべって開かない。いつも手の平に汗をかいているというのは「地味につらい」のです。
なかなか想像できないですよね? そんな方は「いつも手の平に納豆がねばっている」とイメージしてください。「地味につらい」のがお分かり頂けるのではないでしょうか。いくら納豆好きの方でも、手にずっと粘られたらつらいはず。
だから一人でも多くの方にこの話を読んでいただき、「手汗の人って大変なんだね(笑)。じゃあちょっとやさしくしてあげようかな」と思ってもらえれば幸いです。
この話は、僕の実体験をもとにふくらませて書いた話です。ちょっと長いですがお付き合いくださいね。
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