マスターレイス達の出会い




「初めまして!五月女和馬って言います。どうぞ宜しくね!」

「………………ああ」

第一印象はヘラヘラ笑ってる変なやつ。どうでも良さそうに返事を返した俺に五月女は気にした様子もなく続けて語りかけてきた。

「いやー、ほかの同年代は何か難しい事考えてたり荒っぽかったりしてたから心細かったよー割と普通そうな人が居てよかった!」

「……それは何より。じゃあ俺はもう行くな。」

会話を切って立ち去ろうとする。そもそも今日は樋浦さんと飯を食べに行こうと約束しているんだ。初対面の人間に構ってる暇はない。

背を向けてその場から立ち去ろうとする俺の腕を五月女は掴んで引き留めようとする。その勢いでバランスを崩し転びかける。

「あっ……ぶねぇな!」

「おっと、それはごめんね?ってか西浦くんってばせっかくの同年代なんだからもっとお話しようよ!同じお父様の息子やるんだからさー」

ねっ、とでも言うかのように首を少し傾げ五月女は笑う。その笑顔はどうにも、なんというか、両親を思い出したというか……嘘っぽいな、と思い少しイラついてしまった。

「……本音でもないことわざわざ語って偽物の笑顔を貼り付けてる人間と仲良くするつもりはねぇよ。」

だからつい、思った事をそのまま言ってしまった。しまった、と思わなくはないが1度言い始めた言葉は止めることが出来ない。五月女は目を丸くして動きが止まる。

「少なくとも同年代だったとしてもあのオッサンの息子に素直になるようなやつと仲良くするつもりはない。ヘラヘラ笑いながら嘘の匂いを漂わせてる奴のことなんか信用出来るわけねぇし俺は誰かと仲良くするつもりも特にない。」

「………………」

彼の腕を振り払いながら少し、言いすぎたかと思う。だが勝利を歩き続けるためにも弱点は作りたくない。友人も親愛も立派な弱点になるのだから。

五月女は少し俯いたまま動きが止まっている。ショックでも受けたんだろうか。だがこの程度でショックを受けるというならこの組織に向いていないと勝手に思う。まぁ動きが止まってるなら好都合。このまま立ち去らせてもらおう。そう考え彼に背を向けてさっさと歩き出した。

「……ねぇ。」

「っ!?!?」

軽く、腕を引かれたように感じた。だがその力はあまりに強く大きく体制が崩れそのまま尻餅を付いてしまう。油断した、そう思い咄嗟に拳銃を取り出そうと懐に手を入れたが鼻と鼻がくっつきそうな程近くに顔を寄せられ思わず動きが止まってしまう。

「俺と友達にならない!?!?」

「……あ?」

脳内を回転させこの状況をどう打開しようかと考えていたが五月女が言い出した言葉に思わず固まってしまう。この状況でその言葉を予測できる人間の方がおかしいだろ、と思う。輝かんばかりの笑顔で言い放った彼はじっと返事を待っているかのように俺を見つめてくる。なんだこいつ。絞り出すように俺は何とか声を発した

「……い、みわかんねぇんだけど。」

「だってさ!君みたいな面白い人逃すなんて勿体ないよね!?」

「面白いってなんだよ!」

「あ、聞きたい?聞きたい?興味持ってくれた??」

「別に興味ないしどうでもいい。」

「辛辣!」

何が楽しいのか五月女はケラケラと楽しそうに笑っている。その笑顔ははじめに見せていた偽物では無かったからなのかなんだか……肩の力が抜けてしまった。どうでも良くなり彼から視線を外し腕時計に視線を落とす。樋浦さんとの待ち合わせまで10分を切りかけていた。

「……っ!!!やっべ時間間に合わねぇ!」

「イッッタ!?!?」

勢いよく体を起こしたせいか五月女に頭突きを叩き込んでしまった。まあ仕方ないな。

「……~〜~イッ、たいんだけど!!」

「ウッセェ!俺は用事あるからもう行くな!じゃぁな!」

無理やり五月女を引き剥がしてそのまま一気に駆け出す。後ろから待ってとかそんな声が聞こえてくるが無視だ無視。あいつよりよっぽど樋浦さんの方が優先順位が高い。


それが俺達の最初のコンタクトだった。




西浦「樋浦さん!すいませんお待たせしました!」

樋浦「ん?別に大丈夫さ、気にしないでいいよ。ところで……」

西浦「?はい!何ですか?」

樋浦「後ろにいるのは友達?」

西浦「え?」

五月女「やっほー!」

西浦「帰れ!」

五月女「ええええ待って待ってまさかのフルオート!?!?」

西浦「俺と樋浦さんの邪魔する奴は制裁するのみ!」

五月女「殺意たっか!!ちょ、流石に死んじゃうから!!」

西浦「死ねばいいと思う」

五月女「酷くない!?!?」

樋浦「あはは、仲いいねキミ達」

西浦「そんなこと全然ありませんから!」

五月女「えー……冷たい!!」

西浦「あああああああひっつくなうっとおしい!!」


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