第13話
盗賊の一人を捕らえた。素直に口を割るようなやつなら、かなりの情報源になるだろう。
とりあえず逃げないように手足を拘束しておいた。
「尋問タイムだ。洗いざらい吐いてもらう。嘘をついたら偽の玉が光って、死んだほうがマシだと思うような目にあってもらう」
ハクの背後に浮かぶ白い光は、嘘をついたら黒く変色し、すぐさま嘘を見抜くことができるという、特殊な魔法の練り上げにより作られた、ハクオリジナル魔法である。
「まず捕らえた人間たちはどこにいる?」
「一番右の通路の先の牢屋にいるけど見ない方がいいな」
男が指したのはこの通路が四方にある部屋の、ハクがきたところを除いて右。
光は白。嘘は言っていないが、ニュアンスから察するに人質は死んでるか、よほどひどい状況にあるということだろう。
街の人にいい報告はできそうにない。元から助けるつもりは毛先ほどしかなかったハクとしては、物のついでに聞いた程度だったため、それほど悲観する内容ではない。
「お前らのボスはどこいる?」
「ボスはそこの左の通路を通って右の部屋にいる。基本そこから出ることはない」
これも白。
「最後に人質とは別に人を攫って何かに利用したことはあるか?」
「というと?」
「奴隷だったり人身売買とかだ」
「やったよ。俺にも人攫いの童貞の時期ってのがあったのさ。最初は子供、家に押し入ったら親が子供かばって、子供だけは助けてくれって泣いて頼んでくるから、子供の目の前で親を殺して子供は連れ去っていい頃合いに成長するまで生かしてやった。そいでいい感じに成長したところで一晩中犯してやった。今でも忘れねぇよあいつのあの絶望に染まった顔。
その次は…」
徐々にテンション高く喋っていく男に、苛立ちと嫌悪が頂点まできたハクが、男の口を裂き、二の句をを次ぐ前に男の頭は、口を境に半分に分かれていた。
「聞くに耐えん」
聞くべき情報は全て聞いた。あとはどちらを優先すべきかというところだが、人質を優先すると、足手まといな人質が必ずいる。それらを連れながら山を降りるのは現実的に無理だ。
となれば、ボスを倒して安全に人質を解放したあと、この山を崩して盗賊たちを壊滅させるほうが楽であろう。
「行くか」
ハクは向かって左の通路を歩いて進んで行った。
その頃、盗賊団頭領の部屋では。
「ボス!仲間が次々やられていきます!」
盗賊団の一人が、顔を真っ青にしながら走って報告に来た。
返り血がついてないところを見ると、やられているのを見て逃げ帰ってきたのだろう。
「馬鹿野郎慌てんじゃねぇ!数でかかれ!ガキ一人にやられたとあっちゃ、おらぁどのツラ下げて大親分に詫び入れに行きゃいいんだアホんだら!」
そう怒鳴ったのは盗賊団の頭領マーシャルド・ポース。複数ある盗賊団の連盟の中のこの一団を任されている大男である。
蓄えた無精髭はいかにもそれらしい風貌を演出する。
元が善人だけに大した期待はしていなかったが、悪い意味で期待を裏切らなかった。
「ガキの分際でこの部屋までたどり着けるかやってみるといい」
なんて独り言を呟いたところで、部屋の扉が爆発音とともに吹き飛んだ。木製の扉の破片がコロコロと足元に転がる。
「だ、誰だぁっ!」
答えは半ばわかっていながらマーシャルド・ポースは叫んだ。
「これは失礼。扉に罠でも仕掛けられているかと思い、爆破させてもらった」
煙の中から現れたのは、まだ年若い子供が一人。
白髪で細い手足と、血色の白い肌の七歳くらいの少年だ。
「てめえかうちに乗り込んできたガキってのは」
「俺の名はハク。お前らをぶっ潰しにきた」
「舐めるなぁあああっ!」
マーシャルド・ポースは激昂と同時に傍に刺してある斧と槍が一体となった武器、ハルバードを抜いてハクに向けて上段から振り下ろした。
「俺たち盗賊がただの盗っ人と思われちゃ困る。元傭兵なんぞゴロゴロいんのさ小僧。てめぇごときが一人で勝てるほど甘かねぇんだよっ!」
「言いたいことはそれだけか」
マーシャルド・ポースの持つハルバードが、カタカタと音を立てながら徐々に持ち上がる。
ハルバードの刃を、ハクの片手がしっかりと掴んでいた。
「ふんっ!」
ハクが力を入れて握った瞬間、ハルバードの刃は粉々に砕け散った。
「馬鹿なっ!」
「おかしいなもうちょい硬いかと思ったんだが、案外柔らかいなそれ」
(ば、化け物かこいつ…)
元は傭兵をしていたマーシャルド・ポースだが、初めて相手に恐怖を覚えた。
勝てないと本能が悟ってしまったのだ。
「くそがぁっ!」
ハルバードの残った槍先だけを使って、やけくそになりながら攻撃してきた。
ハクは微動だにしていないが、それでも槍がハクに当たることはなかった。
「ディフェンシブ・オーラ」
自らに魔力を纏うことで、あらゆる攻撃を防ぐ防御魔法。魔力のコントロールを鍛えたハクだからこそできる技である。
「
ほぼ全快ともいえるハクの魔力で初歩の炎魔法を行うと、それだけで大火力の魔法へと変化する。それは、人一人焼きつくせるほどの。
「く…そがき…」
体がほぼ灰になって、唯一動く口を開いて言ったのは、たった一言。
それからピクリとも動かなかった。
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