問1.2 : Aクラスってどんなクラスですか?

 階段を登ってすぐ隣にはAクラスの教室がある。

 普通の教室の五倍はありそうな広さで、かつ、壁の白さが目に痛いくらいだった。ドアはセキュリティカード認証付きの自動ドア、窓は防弾ガラスと無駄に金庫並みのセキュリティになっている。

 成績優秀者は、それほど重宝されているということなのだろう。

 はぁ、と思わずため息が漏れてしまう。

 あんなことがなければ、僕もここにいるはずだったのに。

 そう思うとやはり気になって、僕は中の様子を少し覗いていくことにした。窓から覗くと、既に朝のホームルームが始まっていた。ただ、防音もしっかりなされており、声は聞こえない。

 登壇しているのは、眼鏡がよく似合っているスーツ姿の女教師だ。たしか高橋先生である。

 声は聞こえてこないが、何やら備品のチェックをしているようだ。ノートPCに個人のロッカー、奥の方には冷蔵庫などもあり、どこの高級ホテルだと空いた口が塞がらない。

 備品の確認が終わると、自己紹介が始まった。

 最初に立ち上がったのは、ツインテールの女の子だ。明るめの髪色に透き通るような白い肌、赤いネクタイとスカートをひらりと返し、その碧色の瞳をきらりと輝かせてみせた。

 文月学園の二年生で彼女のことを知らない者などいない。

 学年主席、島田葉月。

 成績優秀、スポーツ万能、そしてその天使のような美貌を持った彼女のことを好きにならない男などいない。二年男子全員の憧れの的である。

 無論、僕も例にもれない。

 Aクラスに入れれば、彼女と同じクラスになれたというのに。そうすれば、隣の席になったり、一緒に勉強したり、いろいろ何やらあったかもしれないのに。

 はぁ。

 見ていてもため息しか漏れないと気付き、僕は踵を返した。

 重い足をのっそりと動かし、僕はできるだけゆっくりと自分の教室に向かった。

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