第11話 18歳の誕生日にプロポーズされた!

【6月17日(金)】

今日は6月17日(金)。私は明日18歳になる。今日は金曜日だから、夜、圭さんの部屋に行って布団に入れてもらう。もう圭さんを十分好きになっている。18歳になって抱いてもらったらどんなだろう。


「明日は18歳の誕生日です。約束しましたよね。18歳になったら抱いてくれると」


「いや、18歳になったら考えると約束したはずだよ」


「私には、抱いてあげると約束するに聞こえました」


「確かめておきたいだけど、美香ちゃんは僕が好きだから抱いてほしいんだよね。お礼のためではないよね」


「最初のころは、お礼したいと思っていたけど、一緒に生活してみて、圭さんが大好きになりました。今は大好きの割合の方がずっと大きいと思います」


「分かった。明日は土曜日だからケーキを買ってきて二人でお祝いをしよう。まだ、1日あるから考えさせて」


「男らしく、決心してください。お願いします」


と言って抱きついた。圭さんはいつもどおり、そっと後ろから抱いて寝てくれた。


【6月18日(土)】

6月18日の朝、目が覚めるとすぐに布団から起きだして、朝食の準備をした。7時ごろ、圭さんが起きてきた。


「おはよう。お誕生日おめでとう」


「ありがとうございます」


「決心がつきました?」


「朝食が終わったら大事な話があるけど良いかい」


「決心がついたみたいですね」


圭さんは無言で朝食を食べている。


「大事な話ってなんですか、少し心配になりました。悪い話ではないですよね」


「大事な話だから食べてから話すよ」


私は、朝食が済むと急いで後片付けをした。圭さんはソファーに座って後ろから私を見ている。後片付けが終わってから、私は緊張してその横に座る。圭さんも少し緊張しているみたい。


「これまでずっと考えていたことだけど、美香ちゃんは僕のことが大好きと言ってくれたけど、僕も美香ちゃんが大好きになった。今まで美香ちゃんに抱いてくれと言われてどれだけ自分のものにしたかったことか、我慢するのが大変だった。18歳になったので、僕のお嫁さんになってほしい。正式に結婚したいけど、どうかな、お願いします」


「私、抱いてほしいと言っていたけど、結婚してくれと言ったつもりはありません。叔父さんに汚された私をお嫁さんにして良いんですか。後悔しますよ」


「美香ちゃんは、汚れてなんかいない。純真だし、優しくて思いやりがある。まだ、18歳なので決心がつかないかな」


「圭さんも同居してから3か月で私のことを分かっているのかしら」


「付き合って3か月だけど、同居しているから90日間毎日会っていることになる。普通の恋人同士なら毎週1回会うとすると90週付き合っていることになる。これは2年近い付き合いと同じになる」


「本当はとっても嬉しいんです。でも想定外で驚いています」


「それなら、良いんだね」


「もちろんです」


「ありがとう。それでは、すぐに結婚の準備をしよう」


「随分、せっかちですね。その前にすることがあると思いますけど」


「何?」


「すぐに私を抱いて下さい」


「それは結婚式の後、けじめはしっかりとつけておきたい」


「真面目過ぎます。抱かないならせめて、抱きしめてキスしてください」


「ごめん。気が付かなかった」


圭さんは私を抱き寄せて優しくキスしてくれた。私は嬉しいやら恥ずかしいやらで、うつむいて顔が上げられなかった。


「圭さんは、とっても誠実で几帳面、すべてまかせて安心できるので、そこも好きなところです」


「今日は土曜日だから、これから婚約指輪と結婚指輪を買いに行こう。あすの日曜日には式場の予約に行こう」


「そんなに急がなくても」


「そうと決まったら、早く美香ちゃんを抱いて自分のものにしたい。もう我慢できないから」


「そういうことなら分かりました。急ぎましょう」


私は3か月も待たされたけど、圭さんは3か月も我慢していてくれたんだ。本当に真面目過ぎてあきれる。それならいつでも良かったのにとも思う。


午後、急いで銀座のティファニーに婚約指輪と結婚指輪を買いに行った。指輪はしるしだけの安いもので良いと言って手ごろなものにしてもらった。


おまけに学校で指輪は目立つので、首からかけたいと無理をいって細いネックレスも買わせてしまった。すごい出費になって申し訳なかったけど、嬉しかった。


婚約指輪はその場でつけて帰ってきた。そして、ケーキを買って帰宅。それから、圭さんも料理を作るのを手伝ってくれて、二人だけの誕生祝いをした。


私たちは婚約した。18歳の誕生日がこんなになるなんてとても想像できなかった。


「圭さんはいつから私を好きになってくれたんですか?」


「うーん、美香ちゃんのためにお布団を買った日からかな。夜、僕の布団に入ってきたよね。あの晩、僕はほとんど眠れなかった。手を伸ばせば抱いてくれという女の子がいるし、風呂上がりの女の子の良い匂いがするし、独身の男には刺激が強すぎる。抱かせてもらえばよかったかなとも思ったけど、こんな僕に身をまかせようとするけなげな気持ちが好きになった。だから、我慢できた」


「私も同じ。あの夜、身体をよく洗って、覚悟を決めて、布団に入ったけど、圭さんは何もしなかった。本当に私を大事に守って住まわせてくれると分かったから」


「それから、美香ちゃんをヘアサロンに連れて行ったとき、美香ちゃんが凄く可愛くなった時、見とれた。こんなに可愛い子が手の中にいる、大事にしようと思った」


「私もヘアサロンに連れて行ってもらった時、すごく可愛くなって、圭さんと一緒にいると今までの私をこんなに変えてもらえるんだと思った。それから、いつだったか、明け方に私の寝相を直してくれたとき、圭さんと目が合ったけど、あの優しい目が忘れられなくて。大好きになった」


「あの時、美香ちゃんが目を開けるとは思わなかったので、すごく驚いた。寝相を直したとき、安心して僕のそばで眠っている美香ちゃんに見とれていたんだ。とっても愛おしかった」


「同じ時に好きになり、大好きになっていったみたいですね」


「そうみたいだね。それで良かったんだ。僕たちは」


それから夜は布団の中で抱きしめてキスしてくれた。ようやくキスと抱きしめるのは解禁になった。私は思い切ってきって聞いてみた。


「いつ、結婚しようと思ったのですか?」


「4月の中頃だったかな。悪い夢を見たみたいで、夜中に美香ちゃんが抱きついてきて、ガタガタ震えているんだ。僕は美香ちゃんがとっても愛おしくなって抱きしめたんだ。美香ちゃんはうれしいといった気がする。覚えていない?」


「覚えていない」


「しばらくすると震えが治まって寝息を立て始めた。顔を覗き込むと本当に安らかに眠っていた。その寝顔を見て思ったんだ。結婚して幸せにしてやろうと。それから唇にキスしたんだ。誓いのキス」


「覚えていません。抱きしめてくれてその上キスまでしてくれた? それって圭さんが気にしていた淫行にならないんですか?」


「美香ちゃんが怖がって震えていたんだ。緊急避難、緊急避難」


「緊急避難って?」


「さしせまった危難を避けるために、他に方法がなくやむをえず行なった行為で、法律上違法とされないんだ」


「そういう手があったんだ。圭さんはずるい」


「でも、美香ちゃんに気付かれないようにしばらくして離れて後向きに寝た。覚えていない?」


「そういえば、夜中に1度だけだけど抱きしめられたことがある。私は夢だと思ってたけど」


「それを聞くと、悪い夢をみたのも悪いことではなかったのかもしれない。今はすっかり見なくなったけど」


「あのとき、美香ちゃんを抱きしめた感触がいつまでも残っていて、今も残っている」


そして、私は圭さんに抱きついた。圭さんはしっかり私を抱きしめて寝てくれた。あともう少しの辛抱。


【6月19日(日)】

日曜日はネットで調べた格安の2人だけで簡単な結婚式を挙げられるという式場へ行った。キャンセルが出ていたので、次週の日曜日に結婚式が挙げられることになった。2人とも親戚がいないのと友人を呼ぶわけにもいかないので当然披露宴は無しで。結婚式と結婚写真のみの打ち合わせをして、衣装合わせも済ませた。


それから、婚姻届の準備をした。必要なのは二人の印鑑、戸籍謄本(抄本)、本人確認書類。私の本籍地は都内だから放課後、取りに行くことになった。圭さんから両親が死亡していることがわかるように、戸籍謄本をとって来るように言われた。圭さんは金沢に本籍があるので、郵送を申し込んだ。1週間位かかるかもしれないという。


婚姻届の証人の署名も二人誰かにお願いしなければならないけど、圭さんは私の叔母さんに電話して頼んだ。叔母さんは引き受けてくれた。もう一人は前の高校の山崎先生にお願いすることにして二人で電話して事情を説明してお願いしたら喜んで引き受けてくれた。


来週の日曜日は結婚式。あと1週間、待ち遠しい。


【6月25日(土)】

土曜日に、圭さんは叔母さんのところへ行ってくれた。叔母さんは私のことをよろしくと言っていたそうだ。山崎先生のところへは転校のときのお礼もあるので、ご自宅へ二人で挨拶に行った。山崎先生はいずれこうなるとうすうす感じていたといって、祝福してくれた。

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