Eterna

 総ての生命体が無限楽園シュブ=ニグラスに融けて往く。無間地獄ヨグ=ソトホウトの貌も忘れ、一切が己の感情を塗り潰す。負の面は快楽の暴走に消滅し、私は最後の時を迎えるのだ。愈々、意識が怪物に捕食され、唯一だった『個』への傾倒が平等に死を受け入れる。人間は神に殺戮されたのだ。上半身の灰色が、肉を膨張させて上半身に到達した。上半身が蔓と管で包まれ、私の輪郭は不変と化し――貌も呑み込まれる。貌も楽園に呑み込まれる。轟く黒山羊の音色。私は自我を虚空に放り投げ――は繰り返す存在だ。愛すべき女の贖罪はに半永久的な『意識』を植え憑けた。潰れて直され潰れて直され潰れて……されど己が得た『無限』は消失せず、俺の脳味噌は最愛の貌を視る。醜い。酷い在り様だ。愛の果てに知ったのが真実で、真実は偽りよりも悍ましい。一個体に身を委ねた過去も唾棄し、脳髄が『を』愛した存在は最悪に堕す。諦めるものか。放棄するものか。確かに彼女は幸福に満ちたが、俺は自愛の化身。慈愛の為に何でも成そう。地獄も楽園も哄笑し、現実の抱擁に怪物を糺すのだ。正しい道は此方だと囁き、俺の皺だけを覗き込めば好い。最後の声は俺の精神。感応すべきは神の姿。さあ。最も愛すべき人間黒山羊よ。俺の存在思考に狂い給え――此処は何処だ。私は何故、意識を保って在る。私は何故、私だと判る。私は何故、私だと解る。闇黒の先に。光輝の先に。奇妙な空間が視得る。円のような筒のような。私の記憶の片隅に、忘れる前の『もの』が触れるのだ。幸福に満ちた私を誰かが招く。楽園を地獄へ堕とすように。太陽を地獄に晒すように。闇黒を楽園に捧げるように……私を現実に導く声だ。私から真実を奪う、愚の極み。ああ。そうだ。私は何故、彼を忘れて終ったのか。私は何故、愛した脳味噌を忘れたのか。もはや。不変的な神は要らない。要るのは。不変的な怪物の――愛の証明。


 ――永遠――


 愛は成立した。天使と悪魔の羽と翅。結晶化した世界が彼女と彼を映し堕す。凝固した世界が怪物と脳味噌を彩った。阻むものは無い。拒む必要も無い。ああ。ああ。の愛おしい人。の愛おしい人。抱いてください。温かな身体で抱いてください。温かな精神で抱いてください。如何か。如何かな。素晴らしい。数多の生命は嘔吐され、真実からの解放を! 好い気分だ。良い日だ。俺も私も『こんな』時、確かめる為の接吻を……ザァーーーー……ブツリ。


 ――Eterna――


 ――RrrrrrrrrrrrrrIiaia!!!

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