行方知れる

 私の愛した貴方。私の愛した中身。罪深い私の認識に、罰の槌を揮い給え。頭蓋を割るほどに強烈な、精神への打撃を齎し給え。記憶の消去。記録の抹消など神の所業で在り、私は極々普遍的な怪物で在ったのだ。故。ああ。後悔が嘲笑うのだ。地面を濡らした脈動は死に、彼の幸福を幸福で潰した。絶望よりも底の無い、私だけの想いが此処に積もる。私だけの思いが此処に重なる。重ねるべきだ。詰めるべきだ。彼の幸福を無碍に堕とさず、私は誓いを刻み込む――研究だ。脳味噌の摘出を繰り返し『あなた』の存在を創造する。数多の思考に『あなた』を塗り混ぜるのだ。私の名前が怪物ならば反対を綴っても問題皆無。人間フランケンシュタインの真似事だ。人間ウェストの真似事だ。何。外見的には醜悪など無い。味噌の詰まった円筒よ。私は科学者だ。私は魔術師だ。賢者の石すらも生成容易。さあ。愛を制作せねば。先ずは男の味噌を出す。次に女の味噌を出す。次に己の味噌を出す。思考を纏めて造るには『最も関係を得て在った』己も晒すべきだ。三者を束縛し……同胞の鋏に委ねよう。同胞の明滅に委ねよう。同胞の好奇心に『身』を委ね――私が何処に在るのか。私が何を成せたのか。答えは其処に在る。答えは此処に在る。愛おしい私の貴方中身たち――そうだ。同胞が齎したのは――潰れて再生する、真実を繰り返す、贖罪の道具。

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