異端の門
Lasciate ogne speranza, voi ch'intrate――La Porte de l'enfer.
現実は脱いだな。素敵な輪郭だ。国民に相応しい姿形で、俺は大変満足で在る。さて。貴様は幸福だ。冒涜王たる俺が『試練』を与えよう。無事総てを呑み込み、己を破棄した瞬間こそが、真の『国民』だと理解可能。希望を捨てる云々と嘔吐した、門の如く俺は甘くは無い。何せ。絶望は世界で最も濃厚な、蜂蜜なのだから。ああ。怯えるのは止め給え。魂の底から脅えるなど、冒涜王に対する恐怖など、酷く無意味な『もの』で在る。未知は悉く滅ぼされたのだ。王は最優先で冒涜されるべき。そうだ。最初の試練は王を殺害する事だ。其処に剣が。火器が。冒涜されずに残されて――おお! 何たる所業か! 貴様は武装すらも嘲笑い、混沌の無貌に喰わせると吐くのか。素晴らしい。此れは試練突破も容易いな。二番目の試練は貴様自身の殺害だ。何。貴様は貴様を吊って此処に出現したのか。成程。最高だ。俺の言葉も貴様には『融ける』と漸く理解した。失礼。王が民を解らぬなど……其処が重要なのだ。理想郷『最低』に賢い支配者など要らぬ。ええい。ならば三番目の試練だ。此れを成立させた瞬間に、貴様は真を手に入れる。腕を伸ばせ。宙に輝く虚空を捕縛して魅せよ。門と成った、奴等の希望と絶望を一切合切盗んで晒せ――出来ない。不可能だと。正解だ。大正解だ。所以を答え給え。ああ。あぁあ! 三番目も突破するとは! 祝福せねば! 此処に真など存在しない!
――王は『 』と握手した。民など偽りで在る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます