独居房

 国に必要不可欠なものは秩序で在る。秩序に必要不可欠なものは法で在る。法に必要不可欠なものは罪罰で在る。故に俺は此処に特別を造り、尖塔の地下に悪夢を埋め込んだ。民以外は国の総てを最悪だと罵るが、残念な輩は罪に在らず。在るのは無意味に存在する民だけだ。ああ。戸口の先が独居の群れ。蠢く人間どもの咆哮だ。構える必要は皆無だと理解せよ。気の触れた人物に触れるなど、木乃伊取り以上の阿呆の所業。ギィィィィ――五月蠅い。煩いな。冒涜を悦ぶ暇も無い。悲鳴。暴言。不定。哄笑……酷く強固な硝子の其処に、一個一個の魂が在り! 何。此処は何処の人体実験室ユッグゴトフだと。誰が脳味噌など扱うものか。失礼。比喩だ。奴等の頭部ほどに輝く、俺の脳天を想像したのか。この『冒涜』される脳髄など埃塗れの白紙否定以下。蝋燭の火を消し給え。音だけで底を探るのも愉快なのだ。聴覚以外を遮りながら人類の進化を嘲笑う。国の証に相応しい。兎角。到着だ。終着点だ。渦巻く色彩と無の膨張を覗き込むが好い。鉤爪と巨腕の混濁が俺を誘うようだ。貴様ならば容易く!


 ――此処こそがが孕んだへの贈物冒涜で在れ!


 墜ちる……堕ちる……虚空ヴォイド

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る