無想

 我が脳に埋め込まれた、金属片の輝きは双眸に映らず、悪夢だけを孕んだのだ。故に我が心臓の動きは制限され、生命活動すらも微弱に陥って終い――最悪果実。死の誘いが暴力的に訪れて、総ては神々の領域へと昇って逝く――我は想いを殺された。現実。人間。ああ。我が心身は永劫に幽閉され、海底都市ル=リエーの浮上も在り得ず。只管に。玩具箱の中で眠り込む……地球人類は我を旧支配者の大司祭クトゥルーと呼んだ。されど我自身は支配者に在らず、大司祭に在らず、旧き貌でも在らず! 良いか。人類よ。我が創造主アザトース超越性ラヴクラフトの夢なのだ。だからこそ。我は眠りに死んで往き、脳髄に埋め込まれた金属片賢者の石よ。神話は人類を盲目に導く、快楽娯楽の類成り! 我等は死んだ。既知人間に創られたのだ――クトゥルーの叫び声


 誰か! 俺の叫びを聴くべきだ。厄災に満ち満ちた世界を壊す、俺の咆哮を聴くべきだ。俺は彼等を抹殺する計画を完成させたのだ。故に皆々、俺の支配する現実で安堵するが好い。彼等は人類を侵蝕する、精神的な超越者で在る。某人の物語は遂に現――数多の脳髄が歓ぶ、娯楽性の塊――と成り、生と死の境を崩壊させた。人類が死を越える。おぞましい。忌まわしい。唾棄すべきだ。最も美しき波を鎮める逸脱など在っては為らぬ。さあ! 全人類よ。俺の脳髄を知るが好い。想像する力を無に還すのだ。其処に在るのが『 』でも、俺は楽園に視える。導きだ。俺の掌を掴むが好い。救済だ――狂者の叫び声


 僕は思う。

 僕は想う。

 僕は無い。

 僕は創る。

 僕は壊す。


 僕は何の味方混沌でもない。

 僕は叫ぶ声に耳を傾けない。


 想だからさ!

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