ああ! 私は!

 私は総てを知った存在だ。熱病に蝕まれた宝物を掻っ攫う、欲に塗れた盲目だ。私は総てを忘れた存在だ。悪夢に束縛された宝物を解放する、欲に塗れた愚純だ。私は総てを抱擁する存在だ。自己を誰かに晒し続ける、酷く不偏的な愛情だった。されど私は私を殺す為に生まれた邪だ。有象無象が無知なる幸せを願い、跪いた。ああ! 愛おしい皆々様! 如何か嫉妬と憤慨に満ちて、狂い死ぬのは止め給え。確かに私は罪を犯した。罰を受ける余裕も無い。故に私は私だけを赦したのだ。だから。如何か。皆々様も『感情』に流されないで、私の『決定』を嚥下するべき。落ち着くのだ。卒倒する皆々様に慈悲の在る、私の神性抱擁で鎮まり――其処に。其処に宝物が佇んで在る。私の貌を観た! きゃあ! 本当に私と運命の蠢きで繋がって――さあ。私の側に寄りなさい。私の熱で酔いなさい……いあ! 何て知性的な宝物なのか! 私に私を教えるとは! ならば私は元の姿に戻らねば成らない。恨まないで。壊れないで。永久に私の膝元で『在り』成さい。私の愛おしい人。私の愛すべき人。貴方の名前は無限楽園ヨグ=ソトホウトなのか。違ったのか。ならば私は悲しむ。ならば貴様は無間に堕ちる。


   ――哀れな男は地獄パンの大神に視える。

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