匣の次は蓋だと決定された。彼は筆を執り、文字列を垂れ流す既知の烙印者だ。盲目的とは違う無貌、現実と理想を胸に抱き、悪質な嘲りが反芻範崇される。其処に彼の意志が在り。其処に彼の意思が在り。其処に全人類の脳髄が在るのだ。故に彼は苦悩する。彼は彼を冒涜した。何故か。自身の行動が矛盾を引き起こし、最悪なる脚本を綴った所業なのだ。視るが好い。現の下方を覗くが好い。深淵が口を開き、彼の存在を欠伸で除けた――彼は叫んだ。彼は震えた。彼は怒り狂った。方法は既に掌の上に聳え、彼は兄弟の帰還を望む。暗き赤液の流れる兄弟を望む。現れたのは貌の無い鬼の群れ。中央で蠢く暗き反転――彼は久方振りに歓喜した。蓋を除ける時だ。既知を破壊する時だ。未知へと反転する時だ。彼は兄弟に触れて……浮れて……否れて……果て。皆に質問だ。彼とは何者だ。何物だ。判らない。解らない。ああ。何の話を成して在る? 可笑しい。彼女の話だろう。違うのか。話の続きを書こうか。マイノグーラ……這い因る混沌……最後に私は成り……耳朶を傾げた闇宙に語り掛け……よ。

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