繰り変える

 悪魔が囁いたのだ。此処には貴様の居場所は無い。彼方に真の棲家が在るのだ。天使が謳い始めたのだ。此処には神々は存在しない。彼方に真の神々が佇むのだ。怪物が叫び始めたのだ。此処には恐怖など在り得ない。彼方に狂気が堕ちるのだ。人間が嗤い始めたのだ。此処には本能は隠されて在らず。彼方に理性が悦ぶのだ。故に私は彼方を望み、永劫の果てを目指すのだ。破滅と再生は此処で途絶えたぞ。私は何者で。何物を欲するのか。己も他も解らず、蜿蜒と伸びる道を歩み続ける。其処に邪な想いは無く、純粋な興味本位が滝の如く。ああ。私を呼ぶ音色が響く。悪夢だ。正夢だ。反転する心地で私が在った。触るべきだ。暗き血を触れるべき。肉が引っ繰り返る。繰り変える。臓物が皮の『位置』とぐるり。明らかを殺した。観よ。視よ。私は彼方の存在へと――夜の鬼が啜るように。

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