がらんどう

 誰かの轟々が耳朶を突き破った。私は聴覚を失い、激痛と共に歪んで往った。此処で私は跪いて、祈りを捧げれば好いのだろうか。神は私を救済する筈だ。脆い器官が血を噴いて、地面に稚拙な絵を成した。太陽か。川か。怪物か。私の赤は塵芥の如く、下方向へと舞い狂って――音は忘れた。肩を握り潰すもの。私は再度、歪んで叫んだ。ああ! 神よ! 救済の手は何処ですか。骨も肉もぐちゃり。覚えるべき痛みの『箇所』が落ちる。冷たい腕が落ちる。頭を抱える事も不可能。助けて。助け――足が転がった。二本、嗤うように転がった。だーるまさん。転んだ。誰かの嘲りが目玉をグズグズ。ぐるぐる。


   ――食屍鬼ぐーるぐる


 わたしはつめたく。かれらはたべる。

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