欲望袋

 人類とは欲望の集合体で在る。人類とは感情の集合体で在る。難い言の葉で『普遍的無意識』『個々的意識』だと説くべきか。我等の精神には常々、邪魔な理が多いのだ。機械を例に思考せよ。我等の造った知識の結晶は『平等』に在らず。総ての創造物は精神の副産物で成り、集合体の分裂体だと理解すべき。ああ。楽園地獄も温い沼だ。奥底も知れぬ、堕落の呼び声—―故に我は欲望を詰める。己の皮膚を剥きながら欲望集合体を詰め込む。隣人人類を愛する為には、彼等の魂を包まねば為らぬ。喜怒哀楽を少々。個人的な意識を微々。重要なのは恐怖強烈で在れ。宇宙的恐怖未知なる所業で成れ。されど我等は愚の極み。誰もが未知を忘れて往くのだ。法を拒む事など不可能。未知とは既知の根源で――話が逸れた。兎角。我は詰めるもの。肉体に精神を這入容れるもの。穴が塞がる。心が塞がる。自己の存在も曖昧に。只管。只管。無貌の嗤う声――膨張した。沸騰した。分裂した。破裂した。精神が肉体を貪った。肉体が精神を舐った。我こそが『普遍的無意識』『個々的意識』の生命体。皮と肉が反転する。臓腑が貌と成り移る。うねうね。ぐちゅぐちゅ。どっろどろ。

 袋の心身を撒き散らす。袋の中外膚肉ひっくり返る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る