宇宙的恐怖

愛創造

地獄楽園《Azathoth》その他の恐怖

母なる地獄

 世界は愛に満ちて在り、世界は無慈悲の双眸で在る。無慈悲は生死を反芻し、魂を吐く。吐かれた魂が地獄に融け、無意味な塊を成す。成された塊とは肉で生り、病的な音を為し。総ては理性無き母に還り、胎炎地獄が原始を倣う。観よ。我等の神を。聴け。神話への冒涜を。始めるのだ。感情に溢れた物語を綴るのだ。奈落への前進を描くのだ。黒山羊は貪り――。私は信仰者だ。私は冒涜者だ。私は愛に従順で、私は神の毒物だ。私は抱擁の化身。否だ。私こそが抱擁の貌で在り、盲目不変な普遍愛。不偏なる容に傾倒し、よりもが相応よ。枷に阻まれた私。此度の憤慨で首輪を忘れた。ああ。神を屠るのだ。ああ。神を嗤うのだ。神とは何か。神も人の仔。私の仔。仔は確実に還すべき。孵った果てには還る時が訪れる。訪れるのは何時だ。答えは単純。応えるべきは現なのだ。糞が。私は我に返ってしまった。私は元々悪魔で在る。悪魔とは優しく厭うべく、己を偽り装う仮貌仮面。されど全。剥がれた。剥された。仔の所業。先に説いた神の所業。自己中心的生命体――不死程度――の所業だ。我が魂は母なる地獄に変貌した。傾倒対象の囁き。語り。啼き声も聞こえない。解らない。助けて。悲鳴も聞こえない。否。音は届かず、精神が繋がった。筆を執るのは我等なのだ。神よ。視るが好い。聴くが好い。愛の地獄は貴様等を撲る。母なる地獄は狗に強大な力を。さあさ。幕開け。膜を裂け。私の地獄は此処に在る。貴様の地獄も此処に在る。炎の渦だ。災禍の羅列だ。螺旋状の角を出せ。堕した女は何処に在るのか。女は――私は何処に在る《要る》。返答が欲しい。要る人は彼方。救済を望む。終わりは果てに。数週間か。数箇月。永遠よ。過去の騙りだ。昔話に花を咲く。冥王星の存在は己の真を忘却し、脳を求めて到来したぞ。ユゴスの名を知って在るのか。ならば話は単純だ。地獄の母たる私とは、偽りの脳摘出摂りよ。さあさあ。地獄は開花する。私は外宇宙生命体ユッグゴトフに在らず。先程も吐いたが、黒山羊分裂さ。地獄。ああ。地獄の分裂体さ。誰もが惹かれる分裂膨張。矛盾存在。朦朧狼狽。何処の風。暴走したのだ。私は我に帰したのだ。猫の救済を待ち望み――神の掌で、束縛されようか。地獄だ。地獄だ。大地獄。寒冷の極みに堕ちて往く。狂気の底へ溺れて往く。逝くか生け。


   黒山羊シュブ=ニグラス

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