第4話 小麦粉ヤクザ、盗賊と戦う


 追いかけてくるゲシュ・ナルケト盗賊は総勢二十二名、一名はまさるがライフルでマサンを撃って振り落としたから残るは二十一名。

 全員ローブを纏い、蜘蛛みたいな馬マサンに乗って追いかけてくる。直ぐにでもトラックに追いつくだろう。

 

「ほなまずはド派手にいくで」

 

 リーヤが助手席側の窓を開けて後方へ手を伸ばす、そこから魔法イネスを放つのかと思いきや。

 

「座標指定、よし。ドッカーン!」

 

「あん?」

 

 後ろの様子を映していたカーナビモニターの映像を確認する、地面が赤く発光したかと思うと直ぐにそこで気流の乱れが発生して、直後中心部から渦を広げるように爆発が生まれた。

 それに巻き込まれたゲシュ・ナルケトがマサンごと吹き飛ばされる。

 

「地雷か?」

 

「似たようなもんやな、魔法イネスを発動させるにはまず最初に場所の指定をしなあかんねん、その後おこる現象をイメージしてようやく発動や」

 

「便利だが、めんどくさそうだな」

 

「そういうもんやろ、このトラックかて作るのにめっちゃ手間かかっとるやん、ウチからしたら地球にある道具はみんな魔法イネスよりめんどくさいで……二発目ドッカーン」

 

 リーヤが二回目の地雷魔法を放つ。

 トラックに関するその発想はなかった。トラックは便利だが製造過程は考えたことがない、こういうのも異世界ならではの考え方なのかもしれない。

 

「何人殺った?」

 

「五人くらいは吹っ飛ばしたけど、多分死んどらんで」

 

「あと十六人か」

 

 そうこうしてるうちにゲシュ・ナルケトが追いつき、トラックと並走する。優はドアを弾くようにして開けて、貼りつこうとしたゲシュ・ナルケトをドアで殴打した。

 

 殴打された男はマサンから振り落とされなかったものの頭を抑えて動きを止めた。その隙を逃さず優は右手で拳銃を構えて男に銃口を向けて撃つ。

 放たれた銃弾は男の頭を撃ち抜いて脳漿を地面に巻きながら倒れる。

 

「ウンサカナ!?」

 

「マガミト コ アング カチンガドーアンガサラマンガ」

 

 ゲシュ・ナルケト達がトラックから距離をとる、その際彼等の会話が聞こえてきたが優には理解できなかった。

 

「何て言ったんだ?」

 

「あれなんやねん!

  けったいな魔法イネスを使いおる! て言ってんで」 

 

 牽制にはなったようだ。

 

「反対側は任せる!」

 

「合点承知や!」

 

 リーヤは窓を開けてそこから腕を突き出して魔法イネスを発動する。今度は地雷ではなく、空気弾のようなものを拳の先から発生させて相手にぶつけていた。

 優もそれに負けず、寝台からショットガンを取り出して近寄るゲシュ・ナルケトに向けて発砲した。

 更に五人片付けたあと、後ろからガコッという鈍い音が鳴り、そしてトントンという音が頭上から響く。

 

「くっそ、張り付かれた! 運転代われ!」

 

「またかいな!? せめてアクセルとブレーキ教えてえな!」

 

「右からアクセル、ブレーキ、クラッチだ。クラッチは踏むなよ」

 

 ハンドルをリーヤに預けて優は運転席の窓から外に出てトラックの上へとよじ登る。ガタガタ揺れる車体の上でバランスを取りながらボディの上にいたゲシュ・ナルケトの男と相対する。

 向こうもこちらに気付いたのか、片手にスクラマサクスのような片刃の直剣を持って切っ先を優へと向けた。対する優も懐からナイフを取り出して向ける。


 不意に、男が直剣で自身の胸と背中を浅く切り裂いた。

 そして少量ながらも出血際立つ傷口を優へ見せつけて自分の頬を裂いた。

 理解の及ばない行為を見て思わず後ずさる。

 

 一瞬の睨み合いの後、男が剣を振り上げて、飛びかかりながら斜めに斬り下ろす。ナイフを逆手に持った優は刃で剣を受け止めながら外側へと流す。同時にナイフを持っていない右手を男の顎にいれる。

 すんでで躱した男は左手で優の右手を掴み、引き寄せながらヘッドバットをきめる。瞬時に優もヘッドバットで対抗する。

 

「うぉら! くっそヤクザ舐めんじゃねえぞ!」

 

「パグブハット」

 

 よろめきつつも何とか大勢を整えるが、今の衝撃でお互いの得物を取り落としてしまった。

 ゆえに両者は殴り合いへと発展する。

 

 両者共にジャブの応酬を繰り返す。優がふいにフックを腹部にいれる、くの字に折れた男の頭を掴み膝をいれる。

 男は鼻からボタボタと血を流しながら踏ん張る、そして拳を優へと叩き込むために踏み込むが、体は前に進まずむしろ重力に従ってトラックのボディに沈んだ。

 

「ウオオオオオオオオ」

 

 優が勝利の雄叫びをあげる。

 それを聞いたゲシュ・ナルケト達はマサンの足を緩めて、そして踵を返して撤退を始めた。


「オッサン! あいつら逃げてくで!」

 

 運転席から身を乗り出したリーヤが大声で呼ばわる。

 

「とりあえずしばらくしたらブレーキかけて止まれ」

 

 非常に疲れた。しばらく休憩を取ることにする。

 ドサっとボディの上に座り込む。傍らには気を失ったゲシュ・ナルケトがうつ伏せに倒れていた。

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