第33話 フッガー家とウェルザー家 ~王様に金を貸した大富豪~
いつの時代も強いのは武力とお金。
ということで、15~16世紀のヨーロッパにも王権をしのぐような大金持ちがいました。
いちばん有名な富豪がドイツのアウスブルグから出たフッガー家でしょう。
鉱山経営で財をなしたこの家は、その金を様々な王族・貴族に貸し付け、利子や担保を取り大勢力になりました。
現在の金融では、借金の担保として不動産や保証人を取りますが、ヨーロッパの豪商は、なんと貿易の独占権(アシエント)や植民地の統治権まで担保に取りました。
また様々な文化人のパトロンにもなって、文化の興隆にも貢献しました。
フッガー家以外では、スペイン・ハプスブルクに大金を貸し付けたウェルザー家が有名です。
ウェルザー家は、フッガー家と同じアウスブルグ出身の豪商で、ポルトガルが東インドへ航海を行うときにも大量の金銭を融資しました。
ウェルザー家はスペイン・ハプスブルク家にお金を貸す際、もちろん担保を取りました。
なんとスペイン・ハプスブルクの領土だったベネズエラ(現在の南米北部の広大な地域)の統治権です。
債務者であるハプスブルク家は、相次ぐネーデルランド独立戦争で財政は火の車。
ウェルザー家へのお金を返せなくなり、ベネズエラの統治権をウェルザー家に取られてしまいます。
そこでウェルザー家は、ベネズエラの植民地経営を行って利益を上げようとします。
そこで送り込まれたのが、なんとあのランツクネヒトです。
前話で取り上げたように、ランツクネヒトというのはドイツ南部の食い詰め者を集めたならず者集団です。
ローマ
なぜこんな連中が送り込まれたのかは不明です。
彼らにまともな植民地経営などできるはずもなく、結局、掠奪と奴隷狩りを行い、ウェルザー家のベネズエラ植民計画は大失敗に終わります。
その様子は、ラス・カサースの著作「インディアスの破壊についての簡潔な報告」の中の「ベネズエラについて」に詳細に描写されています。
そこに記述されている「アレマーニャ(ドイツ)の商人たち」というのはウェルザー家を指します。
ウェルザー家はどうしてこのような連中に植民地経営ができると考えたのか不明です。
結局、ベネズエラ経営は割に合わないと判断され、ウェルザー家は手を引きます。
残ったのは、インディオたちの死体のみ。
輸出されたのはヨーロッパで行われていた邪悪な戦争のみでした。
現代でもブラックウォーターのような民間警備会社(実態は傭兵)が中東に派遣され、現地の人を殺害する事件が起きますが、人間社会はあまり変わっていないようです。
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