ベルゼブブさんは現在婚活中・・・?

ちびまるフォイ

人間はなんてものを作っちまったんだ

結婚相談所に上半身裸の男がやってきた。


「お名前をうかがってもいいですか?」


「け、警察に突き出す気ですか!?」


「ちがいますよ。そう思うんだったら上裸で来ないでください。

 プロフィール登録する必要があるだけです」


「ああ、そういうこと……名前はベルゼブブです」


「悪魔の?」

「悪魔の」


たしかに翼も生えていれば、額から角も生えている。

胸毛もあるので悪魔でまちがいないだろう。

胸毛のある男はすべからく悪魔である。


「ベルゼブブさんレベルの上級悪魔だと簡単に結婚できるんじゃないですか?」


「いやぁ~~照れますねぇ。自分でもそう思いますぅ」


「お世辞です。めんどくさいリアクションやめてください」


「ええ……」


「それじゃ、あなたのプロフィールを埋める必要があるんで

 あなたのことを聞かせてもらえますか?」


悪魔は咳払いしてここぞとばかりに低い声を作った。


「よかろう。では汝に我の……」


「あ、そういうのではなく普通ので」

「すみません」


ベルゼブブは普通のテンションに戻って話し始める。


「実はわたくし悪魔ですから、結婚相手はもちろんその周囲も不幸にするんです」


「なるほど……それは確かに結婚相手は見つからなそうですね」


「で、でも! 悪魔だから願いを叶えたりはできるんです!」


「それいいじゃないですか! どんなに欠点があって大きな長所が1つあれば

 女性もきっと相手にしてくれますよ!」


「本当ですか!」


悪魔・ベルゼブブを結婚相談所に登録して相手を待った。




数日後、ベルゼブブがまた相談所にやってきた。

ただでさえ紫色の肌がいっそう血色わるく見える。


「あの……大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃないですよ! あれから1件も相手が見つからないなんて!

 地獄よりひどい仕打ちです! 一生独り身の悪魔になれと!?」


「なにがいけなかったんでしょうねぇ」


「やはり、わたくしのデメリットが協力すぎたんでしょうか。

 わたくしと結婚すると家族ひいては親族、さらに近所の人まで不幸になりますし」


「あなたはインフルエンザの菌ですか……」


「ありのままで戦うのはやめます! あの、わたくしのプロフィールを直してください!」


悪魔はまるで天使に許しを請うように手を握った。


「どう直せばいいんですか?」


「わたくしの能力のくだりをまるまる消してください。

 近づくと不幸になる男だと思われたくない!」


「それはかまいませんが……それだとあなたの長所もなくなりますよ?」


「長所を出してもこのありさまなのだから、気にしません!」


「……わかりました」


悪魔のプロフィールから能力に関するくだりをまるまる削除した。

これで普通の人間と同じ土俵での勝負となる。


「これできっと希望者が出てきてくれます!」


悪魔は嬉しそうに結婚相談所を去っていった。





また数日後、

半泣きの悪魔が相談所にかけこんできた。


「どうして来ないんですかぁぁぁぁぁ!!!!」


「え、ええええ!?」


「あれからずっと待っているのに候補者が誰もこないんです!

 ホワイ!? ホワイ、ヒューマン!?」


「なんでですかねぇ……」


相談所側からプロフィールを客観的に見えても、項目に悪い点は見受けられない。

相手をえり好みしているわけでもない。


となれば、残された手段はただひとつ。


「ベルゼブブさん、最後の手段を使いましょう」


「えっ……? そんなのあるんですか? お願いします!」


「わかりました」





それから数日後、嬉しそうな顔の悪魔が相談所にやってきた。


「や、り、ま、し、たーー!! ついに相手が見つかりましたぁ!!」


「本当ですか。それはよかった、おめでとうございます」


「それもこれもあれもどれも、あなたのおかげです!

 最後の手段を使ってから候補者が後を絶たないんですよ!

 本当にありがとうございます!」


「いえいえ、私たちはお客様に最高の相手を見つけるのがお仕事ですから」


「ちなみに、最後の手段ってなんだったんですか?」



スタッフはパソコンに登録されている悪魔の顔写真を見せた。


「フォトショップってご存知ですか?

 人間界ではこれで顔写真をいい感じに加工できるんです」


自分でも信じられない出来栄えに悪魔は言葉をもらした。




「あ、悪魔のツールや……」

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