君に出会えてよかった
荒神 辰
第1話 光を見つけた
私、大井さつきは東京の大学に進学することになった。
卒業式から数日が経ち、新居も決まった。
私は早く新居に慣れ、バイト先などを決めるために予定より数日早く新居に引っ越すことを決めた。
荷造りを始めてから数時間が経ち、私は少し体を休めた。
「一人暮らしか~....お隣さんとかと仲良くできるかな....」
私は他人と話すのが苦手である。
高校の時もクラス内で話したことはあまりなく、常に端っこにいた。
そんな私は毎日のように本を読んでいた。
ジャンルを問わず、いろんな本を読んでいた。
本だけが友達だったと言っても過言ではないだろう。
「本の整理もしなきゃな~」
そう言って私は本棚の前に立ち、新居に持っていく本の厳選を始めた。
可能ならすべて持って行きたいが、1000を超える本を持っていけるわけもなく、100冊に厳選することにした。
「時間かかりそうだな~」
独り言を言いながら私は本の厳選を続けた。
厳選を始めてから4時間が経った。
外もすっかり暗くなり、外から聞こえた子供たちの明るい声が聞こえなくなった。
本棚の整理ももうじき終わりそうなところまでこぎつけた。
持っていける本もせいぜい4,5冊が限度になってきた。
悩みに悩んで手に持っていた本を本棚に戻した。
「さて、次の本は....」
私は次の本を取り出した。
普通なら少し悩んでから持って行くか行かないかを決めていたが、この本はそうならなかった。
「こんな本あったっけ....読んだ覚えが全くないんだけど」
私は読んだ本は絶対覚える。
1度読んだ本ならタイトルを言われただけであらすじを答えられる自信だってある。
しかしこの本は読んだ覚えがない。
「買った覚えはあるんだけどな~....どんな本だったっけ」
私は気になって本を開けた。
パラパラめくっているとあるページにしおりが挟まれていた。
「このしおり....」
それはどこにでもあるシンプルなしおりだった。
しかしそれを見た私は胸が痛くなった。
理由など明確だろう。
私の人生を180度変えてくれた。
「そうだあの日....
光を見つけたんだ」
さかのぼること半年前、2学期が始まり、受験が近い3年生は皆ピリピリしていた。
友達としゃべる余裕などほとんどなくなっていた。
私はどうなのかというともとからしゃべることなどなかった。
私はしゃべる暇さえあれば本を読んでいた。
勉強する暇さえあれば本を読んでいた。
私は勉強はできる。
正直焦る必要はない。
私は昔から博学埼栄と言われていた。
試験では必ず1位を取っていた。
そのため私はいつも浮いていた。
プライドもあった。
21世紀の李徴と言ったら私だろう。
私はピリピリしているクラスメイトを横目に昨日買った小説を読んでいた。
「ねぇ、大井のやつ、また本を読んでやがるよ」
「勉強できる奴はいいよな~」
皮肉混じりの声でそんなことを言われた。
私も少し気分が悪くなった。
だから私は教室を出て屋上に向かった。
昼休みでもないのに屋上に好き好んでいく人はいないだろう。
屋上に来た私は再び本を読み始めた。
圧迫感のないところで読んだのはいつぶりだろうか....
今度からここで読もう、私はそう決めた。
「うわぁ~、先客がいたか~」
そんな声がドアの方から聞こえてきた。
そっちに振り向くとそこには一人の男子生徒がいた。
それが彼、暁瞬との出会いだった。
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