不死嬢

虹音

第1話 少女との出会い


雷雨の激しい真夜中…

傘を差しながら急ぎ足で家へ向かう。

その日は近道をしようと公園の抜け道へ入ろうとした。

いつもと少し違う真っ暗な公園...。

ふと、立ち止まり辺りを見渡した。

今日はいつもに増して不気味だ。

時々光る雷が俺の恐怖心を煽る。

はやく帰ろう、そう思った時だった。


???「」


レオン「......!!」

誰か...いる。

いや、公園なんだ、誰かいたって不思議じゃない。

真っ暗で不気味な公園の中、言い聞かせる様に呟く。

落ち着きながらもそいつを無視して進もうとしたときだった、


???「......お兄さん」

レオン「............っ!?」

驚きが隠せなかった、

これがもし普通の人だったらこんなにも動揺しないだろう。

しかし俺の耳に届いた声は

────まだあどけない少女の声だった。

その声は冷えきっていて、

この世のものとは感じさせないくらいの

透き通った声だった。

【関わってはいけない】

──そんな気がした。

でも、もう遅かったんだ。

雷の光で見えた彼女は血まみれで

薄気味悪い笑みを浮かべていた。

あんなにうるさかった雷雨の音が

しんと静まった気がした。


???「...お兄さん...殺して...」

レオン「こ...ろす...?」

意味がわからなかった。

頭が回らなかった。


────ただもう引き返せない、そう思ったんだ。


???「私を見ても逃げない人なんて、初めて」

怖くて声も出ない俺を他所に少女は喋り出した。


???「それか...腰を抜かして逃げれないとか?」

図星だ。


???「そんな怖がらないで?私...あなたの様な人を探してたの。」


レオン「俺...みたいな...?」

こいつは何を言ってるんだ...?

ただこいつが俺を敵対していないことに安心感を覚えた。


???「そう、私を殺してくれそうな人。」


レオン「.........頭が狂ってる。」


???「狂っていて結構。」

小声でいったつもりなのに聞こえていた。


???「私...死ねないの。だからずっと殺してくれる人を探してる。」


死ねない???

そんなことあるわけない。

死にたいのなら

──自分で勝手に死ねばいいのに。

こんな迷惑な話などない。


自分のことに人を巻き込むな。


そう言おうとした時だった


プシュッ


何か不気味な音がした。嫌な予感しかしない。

さっさとこの場を離れて全部夢だったと

自分に言い聞かせよう。


???「......」


レオン「......っっ!!!」

生暖かい何かが肌に触れた。



────血だ。


???「ねぇ、見て、ほら、こんなに血が出てる...ね?...」


雷の光が少女の首を照らす。

ぱっくり傷が開いている。

血が止まらない。

イカれてる。

吐きそうだ。

一刻も早く逃げ出したい。

しかし膝が震えて上手く歩けない。


???「そんな怯えないで?怖がらせたい訳じゃない。

信じて欲しかったの。

力になってくれる誰かが欲しかったの。私は独りなの...。」


消え入りそうな声で訴えた少女の言葉が心に刺さった。


『私は独りなの...。』

こんなあどけない少女が独り...。

一体どんなことがあったのか興味を惹かれつつも

怖がりながら少女の訴えを聞く。


???「私の力になって...お願い...。」


レオン「......話...聞くだけ...なら...。」

震えながらも情けない声が出た。

ああ、これだから自分は嫌いだ。


少女の独りの寂しさ、俺はその寂しさを埋めてあげたいと思った。



アロン「いいの?...私...アロン...あなたは?」


レオン「...レオンだ。」


そして少女と共に帰宅し

俺は覚悟を決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る