宇宙子と死体

「あ、私鞄も持って来てないや」

 校庭を歩いていると突然空湖が立ち止まる。

「それに今日は休んでいるんだから学校に来たら色々変よね。コウ君、教室まで行ってノート取って来てくれない?」

 空湖から変という言葉が出てくるとは思わなかったが、放課後の遅い時間とは言えまだちらほらと生徒が残っている。一緒に行動している所を見られるよりはその方がいいか、と「分かった」と言って校舎に入る。

 部活動の後片付けか、教室にはまだ数人生徒が残っていた。

 空湖の机からノートと教科書を取り出すと落書きだらけだ。でも自分で書いたものではないのだろうなと思う。

 自分の鞄に入れながら、僕も何かの嫌がらせをしていると取られないだろうか、とも思うが友達と取られるよりはいいのかもしれない。

 というより僕は何でこんな事をしているのだろう、と思いつつ空湖の待つ校庭へ戻る。



 校庭に戻ると空湖の姿がない。校門前に移動したのかとそっちを探すが見当たらない。探さなくてはならないのか、と周りを見渡すとあっさりと見つかった。

 旧校舎の入り口の前に空湖は立っていた。校舎というには小さい、正確には倉庫か何かだろうか。その前で中を見るように立っている。

 僕は走り寄り、どうかした? というように彼女の顔を見たが、その視線の先にある光景を見て絶句する事になる。

 あまりに現実離れしていて、悪戯か、夢か、と色々な考えが渦巻く中、でもひどく冷静な自分もいて……。

 色々な思考が渦巻く頭の中が少し落ち着くと、僕はぎこちない動きで、隣に立つ宇宙人と呼ばれる少女を見た。

 空湖が何かをするはずはない、僕と別れたのはほんの数分前なのだ。僕はそもそも超能力や超常現象、ましてや宇宙人なんてものは信じていない。


「と、とにかく。先生を呼んで来なきゃ」

 でも彼女を一人ここに残していいものか? でも現場保存と言うものをしなくてはならないんじゃ? 誰か残って現場を見ていないと……、でも彼女に知らせに行かせるのもそれはそれで心配だ。

 混乱する頭の中で「現場を誰も触っていない」事を証明するために携帯で写真を撮ってから職員室へ走った。

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