加々美原小学校

 二度目の休み時間、教室内の観察も済んだところで学校内を軽く散策してみる事にする。

 校舎は木造、校庭はかなり広いがあまり整地されていない。少し離れた所にあるのはもう使われていない旧校舎だろうか。

 周囲に民家は少なく、裏は林だ。元々親が都会の生活に嫌気が差し、静かな町に住みたいというので越してきたのだ。父は株の投資家、母は作家、どちらも都会の街中に居を構える必要がない。

 もっとも母は締め切りが近い事もあって引っ越し早々帰らない日が続いている。


 児童が描いた絵の貼られた廊下を歩く。各学年は二組みずつという所か。校舎は三階建だけどそれほど大きくはない。

 学校は歴史がある様相だけど生徒は皆今時の制服を着ている。

 校舎を立て直す費用はないがせめて制服だけでも新しくしたという感じだ。白いブラウスに紺のベストというシンプルなデザインだけど、それだけでも活き活きとして見える気がする。

 軽く校内を見た帰り、教室前で男の子と女の子が待っていたように話しかけてきた。どちらもクラスメートだけど、席は確か離れていたはずだ。

「おい、あんまあの宇宙人に関わらない方がいいぞ」

 宇宙人? と思うが誰を指しているのかは大よそ察しはつく。あの空湖という女の子の事だろう。

 二人の話では彼女は自分の事を宇宙人だと言い、宇宙と交信すると言って校庭に石灰で地上絵を描いたり、通信機だと言って怪しげな装置を積み立てたり、とにかく問題ばかり起こしているらしい。

 いわゆるいじめられっ子には違いないが、彼女の薬品や機械で怪我をした児童も多く、教員もいじめを黙認しているという。

 皆が彼女にしている嫌がらせの類は数え切れないが、何をしても懲りないため今では誰も口をきかない。

 僕はまだ彼女の事をよく知らないので、この二人はその事を忠告してくれたのだ。

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