第2話 このくだらない世界に祝福を!②
「『
さすがの少女も余裕がなくなったのか、床に自堕落に寝転がるのではなく、きちんと椅子に座っている。俺は床に正座だったが……。
「『
なんとなく話が読めてくる……。
「つまり、おまえは俺が抵抗したから自分が使える『
「そういうこと……。輪をかけて最悪なことに無理矢理複数の『
「取れなくなった……と」
「正確には無理矢理、引き剥がせば取れないことはないんでしょうけど……」
「俺にもなんとなく解るが、首元に絡みついてる魔力の塊なんて無理に引き剥がしたら……」
「まあ、せいぜい首が飛ぶくらいよ」
「せいぜいどころか、それだけで充分にお陀仏だわ!」
今まで何度も死線はくぐり抜けてきているが、さすがに首に巻かれているものが爆発した経験はない。俺の耐久力なら耐えられないとも言い切れないが、積極的に試したいことではない。
少女は苛立ちを隠さずに叫ぶ。
「私だって無理矢理外すなんて真似したくないわよ!」
「おう、さすがに俺に対して悪いと――」
「そんなことしたら、私の『
「自分の都合優先かよ!」
とんでもない自己中女である。
「私は『
この女の能力は召喚術にだけ特化しているということらしい。それ以外の魔法や霊術の才能はいまいちということだろうか。
「『
要はこいつにとって、この『
先程、身体が勝手に動き、棚の上にあった本を無理矢理にとらされた。
あれはまさに、この『
状況は理解した。
だが、まあ、正直自業自得だと思う。
本当に切なる願いで異世界召喚に縋ったのならまだしも、「棚の上にあるマンガを取らせる」などというくだらない願いで人を呼んだのだ。罰があたったという他ない。異世界召喚が使用不能になったとしてもやむを得ないことだろう。
俺の首に巻かれている物についてはゆっくり引き剥がしていこう。相当複雑に絡み合っているいるようだから一朝一夕には無理かもしれないが、まあ時間をかければ外せないことはない。俺はこれ以上の困難を何度だって乗り越えてきたのだから。
だから、俺は言ってやる。
「まあ、これも一つの機会だろ。これに懲りたらくだらない願いで人を呼ぶのはやめて、自分で――」
「責任……」
俺の言葉を遮る様に少女は呟く。
「責任とってもらうんだから……」
「……は?」
少女は俺を睨んでいて、その目には紛れもない涙が浮かんでいて、
「あんたは一生私の下僕になってもらうんだからぁ!」
「はあ?!」
「うわあーん!」
そして、少女は大粒の涙を流して泣きだす。
「………………」
俺は今までいくつもの世界を救ってきた。
だけれど、こんな風に泣く少女の涙を止める術を俺は知らなかった。
俺はいったいどうしたらいいんだろう……。
理不尽なことで泣く女を宥めるのは魔王を倒すよりも難しいということを、俺は学んだ。
こうして、召喚勇者である俺と引きこもり召喚士の物語は幕を開けるのだった。
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