中卒魔王の復讐 ~チートを添えて~
煽詐欺
第1話 中卒労働者
蝉がうるさい夏の日、中卒の俺は一人オンボロの車を運転していた。
「クソが……なんで俺が行かなきゃいけねえんだよ……いいだろ行かなくても……」
なぜこんなに苛立っているのかと言えば、早い話が盆の帰省のせいである。
中卒の俺は帰省などしたくなかった。中卒だから。高校を卒業出来なかったから。両親にも親族にも合わせる顔がない。何より劣等感に押しつぶされそうになる。
同い年の従兄弟が大学に通っているというのもクソだ。絶対に会いたくない。両親が俺の目の前では彼と比較するようなことを言わないにしろ、だ。
だが「帰省しろ」と両親に言われた俺には都合よく断る理由が無かった。盆休みで仕事はない、中卒じゃ大して稼げないから遊ぶ金もない、中卒じゃモテないから女もいない。両親には全部見透かされていた。腹が立つ。図星だから。
そんな訳で帰省するしか無かった俺は、ブツクサ言いながらも故郷の見慣れた景色に車を走らせていた。不思議なもので、妙な安心感を覚えた。見慣れた景色が荒んだ俺の心には案外響くようだ。
実家まですぐそこ。あと少しで着く。
嫌な気持ちと懐かしい気持ちをない交ぜにしながら最後の曲がり角に差し掛かり。
俺の目の前に白い何かが飛び出した。
次いで轟音。さらに次いで赤色が広がった。
気が付くと俺は日差しに熱せられたコンクリートの上に投げ出されていた。身体が動かない。
ああ、事故ったのか。
妙に冷静だった。なんとなく、「これから自分は死ぬんだ」ということを理解した。中卒でもそれくらいは分かる。なんせ両足があらぬ方向に曲がってる上、腕が片方無いのだ。痛みもない。曲がり角で充分減速していた俺に一体何km/hで突っ込めばこうなるのか不思議でならなかったが、中卒なので計算出来なかった。
「クソ……」
それだけ言って、今までの人生を後悔する間も無く俺は死んだ。
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