弟殺し4

加藤の叔父の話をしようか迷う。細かく言うと叔父の手紙の話である。面倒だからかいつまんで記すと加藤の叔父は手紙の中で

「加藤は瀬川さんを大変に恨んでいる。あなたも気をつけるように」

と私に忠告した。叔父(仮に磯部とする)は私が当事者とは知らなかったのである。それは私が電話口でとぼけたからである。なぜとぼける必要があったのかというと私が磯部が加藤の叔父とは知らず滞納した保険料の督促の電話をしたからである。エクセルを印刷した滞納期間と金額を何度も確認してから住所録に記された番号にかけると

「知らないのか?」

と言われた。知ってるから電話をかけたのである。住所録(会員名簿)はぶ厚いバインダーに何枚も紙を挟んだもので番号が違ってたりするものも結構あった。半ば期待せずに電話をすると通じたので

「磯部さんに間違いないですか?」

と念を押してから滞納金額を伝えた5万円くらいだったと思う。磯部は面食らったような反応をした。そして

「知らないのか?」と言われた。

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