フミ王
*
「あー……うー……わかりました! 可及的速やかに検討しましょう」
面長の眼鏡をかけた中年男が、胸をドンと叩いて答える。若干、老眼が入っているようで、額に三本シワを作り、顔を前後させながら、厳しい表情を浮かべている。
砂国ルビナのフミ王である。
「いや、検討ではなく。即刻、ハンフリー=ミンツを解放してください」
かなり強硬に迫るのは、蒼国ハルバニアの勇騎将ガーランドである。
ルクセニア渓国との戦での派兵を行わなかったこと。そして、独断でルクセニア渓国の救援に向かった竜騎兵団団長ハンフリー=ミンツの処分。
この2つの判断は、反帝国連合国の中で非常に問題になっている。
「反帝国連合国の一員として、貴国の背信行為とも言える行動は本当にあり得ません。我々を敵に回すおつもりですか?」
「……あー」
勇騎将ガーランドの口調はすごく厳しいものになっていた。本来、12大国の王に使うような口の利き方ではないが、フミ王に対しては相当強行でやらなければならないと指示がでている。
「……いー……うー」
「……」
「えー……おー……」
「……」
「かぁ……そ、それは……決して私の判断ではなくてですね」
三本しわメガネ王が、汗を拭いながら、しどろもどろになりながら言い訳をする。
そんな中。
「やって見ろヨ! いぇー」
突如、玉座の間に現れたのは派手な黄金の鎧を着た青年だった。
フラィ王子。砂国ルビナの第一王子であり、現竜騎兵団団長である。
「いぇー! 親父がモタモタしてるから、俺が決断したんだヨ! ヨ!」
「……」
両手の親指を下にして、舌を出してニヤッと笑顔を浮かべる。
「……アホ丸出しだな、親の七光」
勇騎将ガーランドは憮然とした表情で吐き捨てる。
「んだとっ! 誰に向かって口聞いてんだヨ! ヨ!」
「砂国ルビナのフミ王の息子だろ? 貴様がしゃしゃり出て余計なことをしなければ、ルクセニア渓国が落ちることはなかったかもしれない」
「はっ! へーゼン=ハイム一人に、なす術もなくやられた蒼国ハルバニアの英雄が聞いて呆れるヨ! ヨ!」
「……お前は本当に事態がわかっているのか? このままでは、本当に帝国に飲み込まれるぞ」
「帝国なんぞ、俺の新生竜騎兵団でぶっ・つ・ぶ・し・て・や・ん・ヨ! いぇー!」
「……バカが」
勇騎将ガーランドは半ば呆れたように吐き捨てる。
「……フハハハハハ。すいませんな、愚息は少々気の荒い所がありまして」
フミ王が、両者を見ながら取りなす。
「とにかく、即刻ハンフリー=ミンツを解放して下さい。立場上、砂国ルビナにいられないのなら、反帝国連合国の所属としてーー」
「いぇー! 俺たちに指図すんな! ヨ! 親父ィ、コイツ、やっちゃっていいかなっ! ヨ!」
フラィ王子は、親指を首筋に当てる。
「はっはっはっ! やめんか、失礼だぞ。あー……うー……申し訳ありませんな、何分、息子は若いもので」
「失礼非礼などは些細なことです。問題は、反大陸連合国における貴国の対応です。あなた方は、我々を敵に回すおつもりですか?」
「あー……」
「……」
「いー……うー……」
「……」
「え……おおっ」
フミ王は、チラッとフラィ王子を見る。
「いぇー! 親父ぃ! こんな脅しに屈する必要はないヨ! 俺たちが帝国に傾けば、反帝国連合国は崖っぷちに立たされるヨ! ヨ!」
「……んんっ……なるほどなるほど。一理ある。流石は我が息子だ。
勤勉で温厚な王は、羊皮紙にスラスラと書き殴る。彼にはメモを取る習慣があり、通称『フミ
一方で、勇騎将ガーランドは苛立ちを隠さずに詰め寄る。
「一刻も早く決断を。あの方は、反帝国連合国になくてはならない人材です」
「んんっ。本当にその通り。だが、大事なのは、一もニにも検討。検討に次ぐ検討、その上で熟慮し、結論を導き出すに足る決断をすることを検討しなければ、正しい結論を導き出すことはできないと考えてます」
「……っ」
フミ王は、ニッコォと胡散臭い笑顔を浮かべる。
「いい加減にして貰えますか? 私は、決断をして頂きたいと申しているのです」
「あー……ぃ……ぅ……」
そんな脅しとも取れる提言に、フミ王は一旦眼鏡を外し、フキフキし、額に三本シワを作りながら、厳しい表情を浮かべている。
「え? えーっと……」
「……ご決断を」
「……」
「……」
・・・
「……おーっ……んん、わかった!」
フミ王は玉座から威勢よく立ち上がる
「わかってくださいましたか?」
「かっ……きくっ……け、決断することを……検討する」
「……っ」
【4巻発売まであと4日】
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