ブギョーナ(1)


          *


 天空宮殿の豪奢な邸宅で、ブギョーナは眠っているヘレナを見ながら悦に浸っていた。


「あひょ……あひょひょひょ……あ、おっと」


 ジュるり、と湧き出てくる唾液を腕でぬぐう。一部、イレギュラーは起きたが、計画はおおむね上手くいった。


 ヘーゼンの妹の誘拐に失敗した時は、冷や汗をかいたが、どうやらヘレナはまったくのノーマークだったらしい。


 いや、恐らくはネトが守ると思っていたのだろうが、黒幕がまさかゴスロ家の当主である自分だとは想定していなかったのだろう。


 ブギョーナにとって、分家の情報などは全て把握している。それこそ、『どこの警備が薄いのか』、『抜け道はどこか』なども、くまなく。そこに、抜かりはない。


 夢にまで見たヘレナが、目の前にいる。何度も何度もエアで揉みしだいたけつが、手を伸ばせばある。今、それが目の前に横たわっているなんて。


「あ、おお……よちよち。あ、怖かったでちゅねー」


 ブギョーナは、眠っているヘレナの頭をポンポンする。そして、上から下まで這うような視線を送り、果てのけつへと行き着く。


「……」


 一挟ひとはさまれくらい、いいだろうか。ブギョーナは彼女の熟れたけつをガン見しながら思う。ちょうど、顔が収まりそうなデカいけつ


「あっ……よっこいせっ」


 ブギョーナは寝ているヘレナをうつ伏せにして、膝をつけさせ土下座の体制にする。必然的にけつが突き出され、上手く挟まれそうだ。


「……」


 鼻がいい具合にフィットしそうな、絶妙なそれ。まさしく、自分のためにあるような名器を前に、自然と顔が近づいてしまう。


「あ、はぁ……はぁ……はぁ……」


 カチャカチャ。


「失礼します!」


 !?


「あ、ぐああああ……あぎぃいいい!」

「きゃああああああああああい!」


 急いで身体を起こそうとした時に、ギックリ腰が発動した。必然的に、下半身を露わにしたまま、けつに土下座した格好になる。


 なんとか、一向に収まらない股間をしまおうとするが、皮肉にも、納めようとすればするほど、これ以上ないくらいに、剥き出されたモノは、ギンギンだった。


 動こうとするが、身体は一向に言うことを効かず、露わになった下半身の一部が、苦し紛れにぴょこぴょこと右往左往する。


「あ、だから! なんでノックをしないんだ! あ、失礼すぎるだろノックなしなんて!」

「も、も、申し訳ありません」


 新人メイドのロリー=タデスは、深々とお辞儀をする。


「あ、貴様じゃ話にならん! あ、クソ犯されたくなければ、その前にオバーサを連れて来い!」

「ひっ……はひぃ」


 脱兎のように逃げて行くロリーに対し、ブギョーナは身体をコロンと横にして、なんとかズボンを履く。


 トントントン。


「失礼しま……あの、なにをやってるんですか?」


 ベテランメイドのオバーサ=リアンは、寝転んだまま微動だにしないブギョーナに尋ねる。


「どうだっていいだろう! それよりも、調べたか?」

「は、はい」


 オバーサは、羊皮紙をブギョーナの前に置く。調査させたのは、ヘーゼンとヘレナの関係性。彼女が脅迫するに値するかの、念の為の確認だ。


「ヘーゼン=ハイムの義母ヘレナは、確かに血は繋がってません。ですが、女手1つで幼少の彼を引き取って育てあげた彼女には、並々ならぬ愛情を持っているそうです。彼の親友であったセグウァという将官の情報です」

「あ、ククククッ……あ、そうだろうそうだろう」

「彼が通っていたテナ学院では、親子仲がいいので有名だったそうです。行事イベントには、必ず義母のヘレナが参加し、複数の生徒が仲むづまじい様子を目撃してます」

「あうぷっ……ぷっぷぷぷーっ」


 ブギョーナは込み上げる笑いを抑えきれなかった。これならば、確実だ。


「また、ヘーゼン=ハイムは首席でテナ学院を卒業しましたが、答辞ではひたすら義母のヘレナへの感謝の気持ちを読み上げたそうです」

「あはっ……あはひょぉ……ひょひょぉ……じゅ、重度のマザコンな訳だな」


 あの変態ムッツリマザコン野郎が。真面目で無愛想な顔をしていても、さすがに育ての母親には甘いらしい。まあ、当然だ。


 孤児である身で引き取り、女手1つで育て上げた身であれば、見捨てることなどは出来はしないだろう。


 そう思ったら、ますます残念だ。ブギョーナは、またしてもヘーゼンの前でヘレナの背中から犯す光景を想像し、自然を腰を前後に動かす。


「……コホン」


 オバーサが咳払いをすると、ブギョーナは我に返る。


「あっと、なるほどな。あ、わかった、では、すぐにヘーゼン=ハイムとの面会を申し込め! 今からだ!」

「は、はい!」


 オバーサは、すぐさま部屋を出て行く。


「あ、ぷっ……クククククククッ、ククククククク、ククククククク、アハハハハハハーッ! アバハァーーーヒーーーッ」


 ブギョーナは横たわりながら、高らかな笑い声をあげる。ヘーゼン=ハイムは、いったい、どんな顔をするだろうか。


「あ、土下座……あ、いや、土下寝でもさせてやろうか」


 妄想が膨らみに膨らむ。


 だが、そんな訳にはいかないのも、ブギョーナの頭は冷静に理解していた。むしろ、これからはヘーゼン=ハイムと協調し、互いにエヴィルダース皇太子を盛り立てていかなくてはいけない。


 いや、ヘーゼン=ハイムほどの有能な武器が手に入れば、アウラ秘書官など、すぐに抜き去ることができるのではないか。


「あ、ぷーくすくす。あ、ぷー」


 ブギョーナはほっぺを膨らませて喜びを表現する。


 その時、オバーサが帰ってきた。


「どうだ? 面会予約は取れたか?」

「は、はい」

「あ、よくやった! それで! 1時間後か? 明日までは待たんぞ!」





























「じゅ、10年後に5分だけ」

「……っ」

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