首都アルツール攻防戦(3)
グライド将軍が
「
「
瞬間、周囲に炎の渦が舞い、瞬く間に薄氷を溶かす。更に、四方に立ち昇る炎柱で、一瞬にして水蒸気と化した。
「よし!」
作戦は的中した。
相生魔法。互いに同様の属性魔法を掛け合わせることで、飛躍的に効果をもたらす高等技術である。タイミング、魔力量など非常に精緻な調整が必要になるが、将軍級ともなれば息を合わせること自体は容易い。
「ほほう。ならば、これは?」
若者の抵抗を喜ぶかのように、グライド将軍は
「
「流水ノ
こちらも水属性の相生魔法で対抗する。無情に襲いかかってくる巨大な炎の塊は、湧き起こる水で威力が弱まり、最終的に氷陣で霧散させた。
「よし!」
相生魔法は威力が上がるが、魔力の消費自体は各々同じなので無理に出力を上げる必要もない。これならば、グライド将軍の攻撃を負担が少なく長時間防ぐことができる。
「おお。やはり、ヌシらは強力な魔法使いじゃな。今からでも、遅くはない。こっちにつかんか? 裏切れば、
「今、くれれば考えますがね」
ザルエグ将軍は軽口を返しながら、これからの戦術を張り巡らせる。相性魔法で、なんとか攻撃を防げる体制を構築した。このまま粘れば、やがて、援護もやってくる。
あとは、もう2人ほど将軍が集まれば、攻勢に転じられるはずだ。
だが、その不敵な老人の笑みは止まることはない。
「かっかっかっ! では、ほーんの少しだけ、本気を出すかの」
そう言ってのけ。
「この2つの魔杖は二対一体として制作されたものじゃ。強敵相手でなくば、なかなか使用しないがの」
「くっ……」
「炎氷絶技」
そうつぶやき。
二対一体の大業物を、見惚れるような動きで振り抜く。
「舞えーー氷竜、炎孔雀」
「……っ」
それら2体の幻獣は、まるで生きているかのように彼らに向かって襲いかかる。
高速に飛翔した炎孔雀は、悠々と地上に這うように飛翔し、兵をことごとこく焼き殺していく。一方で、氷竜もまた、
「お、落ち着け!」
ザルエグ将軍は叫ぶ。確かに、不規則な生き物のような動きで翻弄をされるが、相生魔法で防げない攻撃ではない。
炎孔雀が、こちらに襲いかかってくる間に、ザルエグ将軍とジュナ将軍は互いに息を合わせて相生魔法を放つ。
「
「流水ノ
まるで、檻に入れたかのように炎孔雀を、相生魔法の魔法壁で閉じ込める。
「よし」
ジュノエ将軍も。ギシ・ガ将軍も。ザルエグ将軍も。ジュナ将軍も。他の軍長ですら、こちらの有利を確信した。
だが。
「ククッ」
グライド将軍の笑い声と共に。
それは、尽く、一瞬にして霧散した。
「バカ……な」
「炎孔雀の羽は、火炎槍の炎を超凝縮したものじゃ。その温度は、火山のマグマ並みにもなる。ヌシら程度の魔力と魔杖であれば、相性魔法など意味を成さない」
「……っ」
マグマの温度は900度から1200度。火山に脈々と流れる溶岩並みのレベルなど、想定すらしていない。
次元が違い過ぎる。
「いかん! 全員、撤退をーー」
「その判断も遅いな」
グライド将軍は、更に
「
瞬間。氷竜が咆哮をあげ、ザルエグ将軍の周囲一帯に
そして。
炎孔雀が高速で上空に飛翔し、何千もの羽を撒き散らす。
その一本一本が。
マグマ並みの温度を持つ高温度の羽だ。
ザルエグ将軍も。
ジュノエ将軍も
ギシ・ガ将軍も。
ジュナ将軍も。
叫び声を上げる暇もなく、跡形もなく消滅した。
初日。グライド将軍による被害。クーデター軍は、将軍4人。軍長15人。兵8千……そして、東軍の指揮官ジェラルドを失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます