戦闘
戦闘合図の代わりに、口火を切ったのはヘーゼンだった。
背後には、
通常、
それが、この大陸の常識である。
「噂に聞いてはいたが、凄いな」
事前に把握していたが、いざ、目の当たりにすると、やはり驚く。しかし、動揺はない。ヘーゼン=ハイムの戦闘記録はこちらの陣営では把握済みだ。
レイラクは左手をあげ指示をする。
「うおおおおっ!」
初手はザハラだった。彼は長槍のような魔杖を携え、猛烈な速度で突進し振るう。
ひとたび振えば、無数の斬撃波が飛翔する魔杖である。鋼鉄を割くほど高威力を持ち、範囲も中距離ほどまでは届く。
だが。
その斬撃が届く手前で、ヘーゼンの周囲に無数の氷柱が発生する。
瞬時に大気中の水蒸気を凍らせ、自動で防壁を張る魔杖である。この凶悪な魔法が存在するが故に、この魔法使いの攻略は非常に難儀となる。
だが、これを攻略するべく試行は重ねた。故に、恐れはない。単純で力押しでいい。以前、散ったイリス連合国のバガ・ズ将軍がそれを示した。
構わずザハラは、前進しながら
「もらったぁ!」
ザハラが猛烈な勢いで、
瞬間、ヘーゼンはもう片方の手に持っていた扇形の魔杖振るう。
「
相手の魔杖をそのまま返す魔杖である。それにより、
「
レイラクがザハラの前に立ち、全て防ぎきる。攻撃を感知し地面から自動で発生させる魔法壁である。
その機能は
「た、助かりました」
「ヤツの、一挙一動目を逸らすな。ニーグナ!」
「はい!」
呼ばれた異民族の男は、次の瞬間、ヘーゼンとかなり近い間合いに存在していた。隣には、ズォルグが立っている。
「魔杖の効果か……移動型……いや、隠密型か興味深い」
「ぬかせ!」
感心するヘーゼンを尻目に、ニーグナはまるで大仰で派手な装飾が施された魔杖を振るう。
「……なるほど」
ヘーゼンは一瞬、体勢がグラつくがすぐに持ち直して続けて攻撃を始める。
「バカな……効いてない!?」
「効いた。だが、我慢した」
「……っ」
あんぐりと口を開けるニーグナ。いや、そう言う問題じゃない。喰らえば、人が立っていられるレベルではない。
大量にかけた場合は、幻覚が見え、場合によればアルコール中毒死するほどのレベルにまで高まるものだ。
どう言う精神構造をしているのだ。
「実際にアルコールをぶち込まれれば仕方がないが、魔法であればね。脳を騙せば大抵は持ち直せる」
「くっ……化け物の類か。だが!
ヴォイギが叫び、自身の魔杖を発動させた。すると、ヘーゼンの地面から樹木が発生して雁字搦めに絡みつく。そして、両手にも強引に開けさせて魔杖を地に落とさせる。
「なるほど……捕縛型か」
縛られた状態で、感心しながらつぶやく。
「瞬時に地面から発生するのが素晴らしい。
「何を余裕ぶっている? そんな身動きが取れない状態でーー」
そう言いかけた時。
一瞬にして、ヘーゼンに絡みついていた樹木がバラバラになる。
「……はっ?」
「捕縛のための対処は想定済みだ。見えないだろうがね」
ヘーゼンは笑顔で自身の親指についている小さな鎖を出現させる。
「
「そ、そんな小さなものが魔杖?」
「宝珠の欠片で作らせたんだ。便利だろう?」
「……っ」
言っている意味がわからない。魔杖など、生涯で一種類が普通だ。あの軍神ミ・シルですら4種類と言われているのに、この男は8種類のみならず、鎖に繋がれている更に数種類の魔杖まで使いこなすのか。
「今度は僕の番だな」
「……っ」
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