詩・飛行機と雲の上

辰巳杏

飛行機と雲の上

飛行機の小さな窓から見えるのは

細かく作られた繊細なジオラマ

見覚えのある店は

だんだんと航空写真のようになっていく

あせる心を空港に置き去りにして



飛行機の小さな窓から見えるのは

なめし革の大海原

ハウライトの白い波は

時が止まったかのように水面みなもに浮かぶ



飛行機の小さな窓から見えるのは

雲のグランドキャニオンや

白いビル群

(または白いメサやビュート)

やがて雲の大地が全てを飲み込み

何もない世界に落ち着いた



飛行機の小さな窓から見えるのは

群青色の海にしみる珊瑚礁サンゴショウ

砂浜に打ち寄せる波が再び動き出す



飛行機の小さな窓から見えるのは

灰色の大地

熱せられたコンクリートに降り立つと

じりじりとあせる心を取り戻した


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