第10話 初日終了

そんなこんなで、異世界初日は終わった。

そして、しょっぱなから犯罪行為に及んだというか、快挙も成し遂げてしまった。

とはいえ、その甲斐はあったのかもしれない。

少なくとも事態は好転していると見ていいとは思う。

何しろ転生者って、いう事を信じてくれそうな人に逢える手立ては見つかった。

とはいえ、これからどうしたらいいのかわからない。

頼れる人は居ない、指図する人も居ない、指導者も居ない、俺一人だけだ。

でも、転生した方が良かったのかもしれない。

前の世界じゃなくてこの世界で…。

考えてみればすぐにわかる、もし俺があの事故、つまりこの世界に転移することになったきっかけが無かったら俺は、あのまま一生を生きていたいたのかもしれない。

何処にも逃げ場は無く、ただ真っ直ぐ一本道を通ることを良しとし、結局捨てられる。

ただ、自分がしたいことも分からず、名誉もなく、夢も無い、そんな潰れている世界だった。

ただ、救って欲しかった。助けて欲しかった。笑っていたかった。

あんな世界に産まれたくなかった。


「…もう一回か。」

一人呟いた、空には星々が輝いていた。今日は、新月なのか、はたまた月が存在しないのか。暗い夜だった。

そして、大きなため息をつき、俺はテントの中に入った。


「…思ってたのとは違うな、まあ、仕方がないのかもしれないけど。」

テントと言うには、粗末というかアウトドア用品のようなものではなく、蚊帳みたいなものだった。

しかし、むき出しの地面に寝っ転がるのではなく、ベンチのようなベッドに布団が置いてあるそういうというか、災害現場の映像で見たことがある応急処置室のようなものだった。

けど、これがスタンダードなのかイリスは二つあるベッドの一つにすでに寝ていた。

しかし、雨風はしのぐことができそうだし、取り扱いが楽というか、俺一人でも出来そうな感じだった。

また、意外にも中は暖かく眠気が差してきた。


「…う~ん、今日は色々あったしな。もう寝ようか。」

そうして、異世界初日を俺は無事に終えることができた。


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