勇者の郷里に跳ばされて?
宮前タツアキ
第1話 序
それは剣と魔法の世界「イムラーヴァ」の歴史においても、大規模な人族・魔族の抗争期だった。
口火を切ったのは、何百年ぶりかで魔族の秘宝『魔王冠』の保持者となり、第十六代魔王を名乗ったゲルドゥア・マグナス。北の大地に魔族を糾合して魔王国クロムレックの再建を宣言し、中央・南部の人族領に怒濤のごとくに攻め下った。人族の国家群は互いの抗争を一時中断し、連合して魔王軍に立ち向かったが、ゲルドゥアの強大な魔力の前に連敗を重ね、国土の大半を蹂躙されるに至った。
追いつめられた人族は、国家の垣根を越えて有能な魔法使いを集め、フェルナバール王国に伝わる秘儀により異世界の人族を召喚した。イムラーヴァに生まれなかったために、神々の不干渉盟約に縛られない者。それ故に強大な力を授かって、人族最後の切り札となりうる超戦士。
人びとはそれを『勇者』と呼んだ。
召喚された異世界人タクマ・シドウは、人族の秘宝『聖剣』の加護を受け入れることにより強大な力を身に宿した。彼はさらに、各国より集められた精鋭と四人のパーティーを組む。
グラドロン教皇国の聖騎士ロレント・ジンバル。
放浪の大賢者カレン・イクスタス。
フェルナバール王国第三王女にして
彼らは急迫する戦況を一転させるため、魔族の本拠に電撃的急襲をかけた。クロムレック王国の首都ネストロモ。そこにそびえ立つ魔王城に。女魔王ゲルドゥアもその超魔力によって頑強に抵抗したが、四聖戦士は激闘の末に彼女を倒し、クロムレック王国軍は一挙に瓦解した。人族は辛くも窮地を脱したのである。
大業を果たした勇者タクマは人びとの歓呼に見送られ、元いた世界に帰還転移していった。これがフェルナバール王国に伝わる、第三次勇者召喚の伝説である。
……だがしかし、伝説は「めでたし、めでたし」では終わらなかった。
魔王軍の脅威から解放された人族は半年足らずのうちに、戦後補償のこじれから再び互いに争い始めた。ベレノス西方諸王国は戦時連合をそのまま継続し、人族最大版図をもつフェルナバール王国相手に領土の割譲を求めたのだった。魔族との長い戦乱にうみ疲れていたフェルナバール王国は、即時の実力行使よりも外交解決の道を探った。王国第三王女にして聖戦士の一人アリエルを、西方連合との交渉使節にさし向けたのだったが……
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